スイッチングレギュレータ出力の交流成分
図2は、スイッチングレギュレータの動的な交流出力を示している。スイッチングレギュレータのスイッチング周波数(通常100kHz〜3MHz)では相対的に低周波のリップルが発生し、遷移時に発生する高周波成分を含む「スパイク」が加わっている。スイッチングレギュレータのパルスエネルギーがリップルを発生させる。交流成分はフィルタコンデンサによって減衰するが、除去されることはない。高エネルギーが発生させるスパイクは100MHz近い高周波成分を含むことが多く、高エネルギーなトランジスタから発生するスパイクは高速でスイッチングする。スイッチングの反復速度と遷移回数を落とせばリップルとスパイクの振幅を大幅に軽減できるが、そうすると磁気素子のサイズが大きくなり、効率が低下する。このアプローチを採用した回路ならば高周波成分をかなり減らせるが、磁気素子のサイズと効率で妥協せざるを得ない*1)。同じく、クロックとスイッチングが高速で、小さくて効率に優れた受動素子を使用できる場合でも、高周波のリップルとスパイクがリニアレギュレータに送り込まれる。
レギュレータでは、広帯域のスパイクよりもリップルの方が除去しやすい。典型的な例として、低損失リニアレギュレータ「LT1763」の除去性能は、100kHzで40dBに減衰し、1MHzで約25dBまで低下する(図3)。大きなスパイクはレギュレータを直接通過する。スパイクを吸収する出力フィルタコンデンサも、高周波での性能には限界がある。高周波の共振によってレギュレータとフィルタコンデンサの性能が落ちることを考えれば、図1の構成はあまりにも単純すぎる。図4は、共振成分といくつかの新しい部品を加え、高周波共振条件に重点を置いたレギュレーションパスを示している。この構成では共振成分により、リップルとスパイクがレギュレータ出力に伝播されるため、注意が必要だ。
共振成分に関する理解を深めれば、さまざまな測定手段を講じることができ、高周波出力成分を低減できる。レギュレータには、パストランジスタから基準およびレギュレーションアンプにかけて主に容量性の高周波共振パスがある。これらの条件に有限のレギュレータ利得帯域が組み合わさることで、高周波除去性能が制限される。入力/出力フィルタコンデンサには寄生インダクタンスと抵抗があるため、周波数が上昇するにつれてその効果が低減する。浮遊容量がさらに不要なフィードスルーパスを生む。グラウンドパスの抵抗とインダクタンスがグラウンドの電位差を発生させ、誤差が生じることで測定は複雑になる。
通常はリニアレギュレータと関係のないような新しい部品も使用され始めている。これらの部品には、レギュレータの入出力ライン内のフェライトビーズやインダクタが含まれる。これらの部品には固有の高周波共振パスがあるが、レギュレータの全体的な高周波除去性能を大幅に上げられる(別掲記事「フェライトビーズに関する真実」参照)。
フェライトビーズに関する真実
導線が包んでいるフェライトビーズには、周波数の上昇につれてインピーダンスが上がるという特性がある。この効果により、直流信号と低周波信号を伝送する導線から高周波ノイズをフィルタリングすることができる。リニアレギュレータの通過帯域内におけるビーズの損失はほとんどない。
高周波では、ビーズのフェライト材料が導線の磁場に反応し、損失特性を生む。周波数と電力レベルに対する損失率はフェライト材料の種類と結合構造によって異なる(図A)。
インピーダンスは0.01Ω/DCから50Ω/100 MHzに上昇する。直流電流と磁場バイアスが大きくなるにつれ、フェライトの損失効果が低下する。ビーズを導線に沿って直列につなげれば、損失効果をある程度向上させることができる。標準製品やカスタム製品の要件に合わせて、さまざまなビーズ材料と物理的構成を選択することができる。
脚注
※1…Williams, Jim, "A Monolithic Switching Regulator with 100-mV Output Noise," Linear Technology Corp, Application Note 70, Appendixes B, C, D, H, I, and J, October 1997.
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