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移動平均の力:デジタルフィルタBaker's Best

A-Dコンバータを使用する際には、コンバータからのいくつかのサンプル出力に対して、コントローラまたはプロセッサを用いて平均化アルゴリズムを適用すると、変換後の信号を滑らかにすることができる。さらにシステムの実効精度を上げられる。

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 多くの場合、A-Dコンバータを使用する際には、コンバータからのいくつかのサンプル出力に対して、コントローラまたはプロセッサを用いて平均化アルゴリズムを適用する。この手法を適用すると、変換後の信号を滑らかにすることができる(図1)。また、システムノイズを低減することにより、システムの実効精度を上げることができる。


図1 多数の連続したサンプルに平均化フィルタを適用することにより、小さなノイズがのったAC信号(A)を平滑にすることができる(B)。
図1 多数の連続したサンプルに平均化フィルタを適用することにより、小さなノイズがのったAC信号(A)を平滑にすることができる(B)。 

 変換データを平滑化するには、一定のサンプルレートで複数の信号を取得し、前もって定めたグループまたは個数のサンプルに対して平均化を行うという処理を時系列に数回繰り返す。図1に示すように、平均化を施したグループをつなげると、滑らかな信号となっているのが分かる。この平均化手法は、コンバータの出力データをローパスフィルタに通しているようなものだといえる。平均化の単位となるグループのサンプル数として適切な値を選択することにより、フィルタリングの精度を調整することができる。つまり、各グループのサンプル数を増やすほど、より滑らかな信号が得られるというわけだ。この平均化処理により、元のデータのスパイクが除去され、最終的な信号の帯域幅は狭くなる。

 この平均化手法によるもう1つの利点は、変換分解能、またはデータ分解能を改善することができる点である。理論的には、DC信号の4個のサンプルの平均化(41)により、コンバータの有効分解能は1ビット向上し、SNR(信号対雑音比)は6dB増大する。16個のサンプルの平均化(42)では、精度は2ビット向上し、SNRは12dB増大する。もちろん、現実の世界には限界が存在するのだが、理論上は、 グループサイズを 4Nにすると、変換の有効ビット数はNビットとなる。

 現実的な目標を立て、実世界の要因をきちんと考慮に入れれば、A-Dコンバータの有効ビット数を増加させることが可能である。例えば、分解能12ビットの変換結果を16ビットに改善するには、平均化に44個のサンプルが必要ということになる。4の4乗は256である。ここで、まず頭に浮かぶのは、「コントローラやプロセッサに必要なアルゴリズムを実装する時間があるだろうか」という疑問だ。16ビットよりも高い分解能を求めるならば、必要サンプル数は急激に増大する。ところで、ここで対象としている12ビットコンバータの下位ビットはノイズが多く、したがって平均化が効果的であることを想定している。ノイズはガウスノイズであるとする。

 平均化するサンプル数に影響を及ぼす実世界の要因としては、時間の経過に伴う入力のゆらぎ、電源の変動、電圧基準の変化、およびシステムの温度による影響が挙げられる。これらの実世界における要因すべてが、変換出力値を変えてしまう可能性をもっている。理論上のゆらぎのないシステムでは、サンプル数が2000であるはずのところが、実際のシステムでは数100サンプルとなってしまう場合があるのだ。そして、この実際のシステムにおいて、サンプル数を数100サンプル以上に増やそうとすると、ノイズが再び増大してしまう。ここで、与えられたデータ集合に対して、平均化の最適サンプル数を計算する方法としては、アラン分散を利用することができる。最後に、入力信号を調べて、セトリング時間に関するエラー、または電源周波数などの干渉周期信号を含むアナログ信号を変換しようとしていないかどうかを確かめておく。

 単純に力任せにすべてのデータを収集して平均化処理を行うのではなく、平均化アルゴリズムの実装時間を節約する方法がいくつか存在する。例えば、新しいデータ点を追加する時に、グループ内の最初に蓄積されたデータ点を削除するというFIFOを実装するとよい。また、4、8、16…など、合計値を除算する際に右シフトが利用可能な数を、グループのサイズとして選択すると便利である。

<筆者紹介>

Bonnie Baker

Bonnie Baker氏は米Microchip Technology社でアナログ・ミックスドシグナルアプリケーション部門のマネジャーを務める。Baker氏へのご意見は、次の電子メールアドレスまで。bonnie.baker@microchip.com


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