高速オシロスコープを使いこなす(4/4 ページ)
最近のデジタルオシロスコープは、かなり高精度な測定や解析が可能である。しかし、このような高度な機能をうまく使いこなすには、入念に準備しなければならない。
20GHzを超えて
デジタルオシロ技術を語るうえで、かつてシーケンシャル・サンプリングオシロと呼ばれていた、超広帯域オシロに関する議論なくして終えるわけにはいかない。1年前のLeCroy社のWaveExpert(図4)およびSDA100Gシリーズの出現までは、「シーケンシャル・サンプリング」と呼ばれており、Agilent社とTektronix社の2つのベンダーのみがそれを提供していた。
LeCroy社のオシロは、超広帯域機器(メーカーにより70から100GHz)の設計方法を本質的に書き直したといってよい。LeCroy社は製品紹介の中で、そのオシロを単にサンプリングオシロと呼んでいる。「シーケンシャル」という表現が当てはまらないからだ。しかし問題は、デジタルオシロはすべてサンプリングオシロであるのに、「サンプリング」という表現に当てはまらないという点である。その年、LeCroy社は、「NRO」(near-real-time oscilloscope)という新しい用語を生み出すことによってこの問題を解決し、NROシリーズを製品ラインに加えた。
このカテゴリに分類されるオシロはすべて、LeCroy社のオシロも含めて、信号が繰り返し出現することが前提である。一定の間隔で再現する必要はないが、本質的に一定の遅延ごとにトリガー信号に従って出現する必要がある。従来のシーケンシャル・サンプリングオシロでは、入力波形の各繰り返しの間に、サンプルを1つだけ採取し、新しいトリガーごとにサンプリング点を1つ進めて更新していた。したがって、帯域幅が非常に広いにもかかわらず、オシロの波形取得は遅かった。この速度がネックとなって、この種の機器は、多くのオシロアプリケーションで使うには対象外となっていた。
これらのオシロの中で、アナログサンプラはオシロの主流から区別されている。このサンプラは、いわゆる0次ホールド回路というもので、入力信号をフェムト秒のアパーチャの不確定性で取得し、取得した電圧を数10μs間維持する。これにより、サンプラ出力は、数GHzの信号を、比較的低周波に複製したものとなる。このサンプラ出力から、オシロが扱うアナログ信号は比較的周波数が低くなる。通常、このようなオシロ内のA-Dコンバータは、高分解能(14ビット以上)で、変換レートが数kHz以下の逐次比較型コンバータである。従来のシーケンシャル・サンプリングオシロでは、メモリー容量が100kサンプルを超えることはめったにない。
100GHzの帯域幅
サンプリング技術の進歩によりLeCroy社のオシロは、適切なサンプリング・プラグインを使用すれば、業界をリードする100GHz帯域幅が実現可能である。加えてA-Dコンバータおよびメモリー技術の進歩により、そのアーキテクチャはシーケンシャル・サンプリングオシロとは全く異なるものとなった。入力波形の各繰り返しの間にサンプルを1つだけ採取するのではなく、LeCroy社のオシロは多くのサンプルを採取する。同社によると、サンプリングレートは最速の競合機器の50倍であるという。さらに、数億ものサンプルを格納可能なメモリー容量を持ち、ビルトインのクロックリカバリ機能により、オシロは多くの場合外部トリガーなしで動作することができる。また、オシロには通常、リアルタイム・サンプリングオシロにしか存在しない解析機能が内蔵されている。このため、LeCroy社のオシロならば対応することができるのである。これが競合機器では多くのアプリケーションでデータ取得に時間がかかり、必要長のデータを採取することができないか、信号のトリガーのために外部機器を必要とするか、または安価な解析機器への複雑なインターフェースを持たせなければ扱うことができなかった。
Agilent社(図5)やTektronix社と同様に、LeCroy社も、超広帯域オシロを光ファイバ通信システム測定に使用できるように、光電気変換器を提供している。しかしLeCroy社は、競合他社と異なり、これらのオシロ用の差動入力プラグインを現時点では提供していない。そのため、20GHz以上の差動信号を4つ同時に表示するには、他社のオシロでは1台で済むところが、LeCroy社の製品は2台必要となる。
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