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PFC用インターリーブ型昇圧コンバータの利点(1/3 ページ)

昇圧段をインターリーブすることにより、力率補正プリレギュレータの電力変換入力および出力リップル電流を減らすことができる。これにより昇圧インダクタのサイズを小さくし、出力コンデンサの電気的ストレスを低減できる。

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 PFC(power factor correction:力率補正)プリレギュレータに最もよく使われる回路構成は、昇圧コンバータである。昇圧コンバータでは、連続する入力電流に対して平均電流モード制御の技術が適用され、ライン電圧の変化に従って入力電流を変えることができる。図1に、従来の単一段の昇圧回路を示す(回路の動作を簡潔に説明するために、ここではDC入力とする)。インダクタのリップル電流の変化ΔIL1は、コンバータに直接入力するので、EMI仕様を満たすためにフィルタリングが必要な場合がある。ダイオードの出力電流I1は連続的ではないため、フィルタリング出力コンデンサCOUTを要する。この構成では、出力コンデンサのリップル電流ICOUTは大きく、I1と出力電流IOUTの差となっている。

図1 入力のリップル電流によってPFC昇圧コンバータのインダクタのサイズが決まる。このインダクタはEMIフィルタリングをも容易にする。また、従来の昇圧コンバータは出力電流が不連続なため、出力コンデンサに加わる電気的ストレスが大きい。
図1 入力のリップル電流によってPFC昇圧コンバータのインダクタのサイズが決まる。このインダクタはEMIフィルタリングをも容易にする。また、従来の昇圧コンバータは出力電流が不連続なため、出力コンデンサに加わる電気的ストレスが大きい。 

昇圧コンバータのインターリーブ

 図2は、インターリーブを適用した2相の昇圧コンバータの機能図で、2つの昇圧コンバータが180度逆位相で動作する。入力電流は、2つのインダクタ電流IL1およびIL2の和である。インダクタのリップル電流は逆位相であるため、互いに打ち消しあい、インダクタによる入力リップル電流は小さくなる。デューティ比が50%のとき、インダクタのリップル電流が最も打ち消しあうことになる。出力コンデンサの電流は、2つのダイオード電流の和I1+I2からDC出力電流IOUTを引いたものである。このため、出力コンデンサのリップル電流は、デューティ比の関数で表され、その値は小さい。デューティ比が0%、50%、および100%に近づくと、2つのダイオード電流の和はDCに近づく。この場合、出力コンデンサに加わる電気的ストレスは小さくなる。

図2 インターリーブ型昇圧コンバータは、180度逆位相で動作する2つの昇圧コンバータからなる。
図2 インターリーブ型昇圧コンバータは、180度逆位相で動作する2つの昇圧コンバータからなる。 

入力リップル電流の低減

 以下の等式と、図3は、インダクタリップル電流に対する入力リップル電流の比率K(D)が、デューティ比Dの変化に伴って変動する様子を示す。インターリーブ型昇圧コンバータにおいてインダクタを選択する際には、この変化の様子を覚えておくことが重要である。

図4 2相のインターリーブ型PFC昇圧プリレギュレータにおいて、出力コンデンサのリップル電流のピークは、従来の単一段の昇圧プリレギュレータのおよそ半分となる。
図4 2相のインターリーブ型PFC昇圧プリレギュレータにおいて、出力コンデンサのリップル電流のピークは、従来の単一段の昇圧プリレギュレータのおよそ半分となる。 

 図4は、単一段の昇圧コンバータにおける正規化された出力コンデンサRMS電流ICOUT_RMS_SINGLE(D)と、2相のインターリーブ型昇圧コンバータにおける正規化されたRMS電流ICOUT_RMS(D)を、デューティ比の関数として表したものである。図から、出力コンデンサのリップル電流は、2相のインターリーブ型昇圧コンバータにおいて、従来の単一段のコンバータのおよそ半分となっており、出力フィルタコンデンサの電気的ストレスが低減されていることがわかる。

図3 インダクタリップル電流に対する入力リップル電流の比率K(D)は、デューティ比Dに伴い変動する。
図3 インダクタリップル電流に対する入力リップル電流の比率K(D)は、デューティ比Dに伴い変動する。  

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