組み込みシステムに浸透するフルカラーディスプレイ(2/3 ページ)
携帯電話機や携帯型音楽プレーヤなどの民生電子機器に搭載されるフルカラーグラフィックディスプレイが最終消費者を引きつけるようになった。組み込み機器の分野にも新しい波が押し寄せている。
次世代ディスプレイ
電子ペーパーディスプレイ技術は1970年代に発明されたものだが、最近の製造技術の進歩によって再び注目されるようになった。このディスプレイはコントラストが高く、紙のような形状をしている。消費電力が極めて少なく、薄型・軽量で、中には曲げられるものもある(図1)。ユーザーには情報を更新できる機能を持った紙で読んでいるような感覚を与える。黒い液体を封入した数100万個のマイクロカプセルと数100個の微細な白色チップが電子ペーパーディスプレイを覆っている。各マイクロカプセルで電荷を制御する活性化グリッドにより、白色チップを表面に浮き上がらせたり底に沈ませたりすることで各画素の色を指定できる。
この電子インクの利点は、双安定・不揮発性マイクロカプセルが電源を切った後もその位置を保持することだ。このコンセプトを実証するため、E Ink社はLinuxベースの電子ペーパー開発キットを提供している。このキットに含まれている800×600画素のディスプレイパネル、電子回路、ソフトウエアを使えば、電池駆動式のポータブル電子ブックを作製できる。
米Qualcomm社はMEMS(micro electro mechanical system)構造と薄膜光学を組み合わせた次世代のディスプレイ技術を開発しようとしている。同社は、蝶と孔雀の羽の微細構造をモデルとしてIMOD(interferometric modular display)を作製した。IMODは干渉によって光を変調する低電力の反射ディスプレイである(図2)。IMOD素子のサイズは通常10μm〜100μmで、その超薄膜構造体が厳密な光の波長を反射して移動する。反射膜は一定の距離を移動し、その距離がIMOD素子の色を決定する。各IMOD素子の解像度は400〜1000ドット/インチである。設計者はいくつかの素子をグループ化して1画素を形成できる。フラットパネルディスプレイを作製するために、Qualcomm社はIMOD素子の大規模アレイを、目的とするフォーマットで組み立てる。素子の先端にドライバICを取り付けて最終的にディスプレイを完成させている。反射IMODにはバックライトが不要なため、消費電力が少なくて済む。
どの技術を使うにしても、ディスプレイシステムにはグラフィックソフトウエアライブラリとドライバICが不可欠である。制御ルーチンはディスプレイのメーカーかサードパーティベンダーから入手するか、あるいは自社で作成する。OSにこれらのルーチンが統合されている場合もある。簡単な描画ライブラリには、線、円、矩形、そしていくつかの文字種を描画するためのサブルーチンが含まれている。もう1つ上のレベルになると、プッシュボタンやスライダー、ゲージ、グラフ、ドロップダウンメニューを含むオブジェクト指向のグラフィックライブラリを使うことができる。画面上で1つまたは複数のオブジェクトを変更すると、ライブラリルーチンによって関連オブジェクトが自動的に再描画される。さらにその上のレベルには、Microsoft WindowsやX Windowなどのグラフィックマネジャがあり、これであればアプリケーションが自らのディスプレイ画面領域を自由に制御できる。複雑さとプログラムサイズは選択するライブラリモデルによって異なる。
基本機能を備えたディスプレイを使うが、インターフェースとソフトウエアは自分で開発したい設計者のために、米Sharp Microelectronics社は100cd/m2の輝度を持つ3.5インチ半透過型TFT液晶ディスプレイを発売した(図3)。解像度がQVGAの「LQ035Q7DH01モジュール」は、少ない消費電力で、さまざまな照明条件下で動作することが要求される携帯機器をターゲットにしている。例えば、GPSユニットやPDA、バーコードスキャナ、試験装置などが挙げられる。このディスプレイは、表示色数26万2144色、消費電力365mW未満、透過モードのコントラスト比100:1、動作温度−10〜70℃という特徴がある。LEDバックライトシステムを入れても、このディスプレイモジュールの厚さは4mmしかなく、重さは約45gである。
LQ035Q7DH01は145米ドル(50個購入時)で販売されている。
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