オープン化へと向かうビルオートメーション技術:より“賢いビル”の実現を目指し(2/4 ページ)
既存のプロプライエタリなシステムを活用しつつ、より高度な機能を実現したい――このようなニーズに応えるためのキーワードが「オープン化」であることは周知のとおりだ。インテリジェントビルを支えるビルオートメーション技術の世界にも、オープン化の波が押し寄せている。
センサーにオープン技術で対応
続いて、ビルオートメーションを実現するためのアーキテクチャについて見てみる。インテリジェントビルのアーキテクチャでは、ネットワークプロトコルとしてTCP/IPを選択すべきかもしれない。ただし、多くのシステムでは、企業ネットワークがカバーしないエリアで膨大な数のセンサーを必要とする。このような場合、ワイヤレスリンク、電力線通信、さらには電話線の共有など、相互接続用のケーブル配線を新たに必要としないネットワーク体系が望ましい。
もう1つ、そうした企業ネットワークのエリア外のセンサーノードには、消費電力を低く抑えることが要求されるという特徴がある。多くの場合、遠隔地では電池のみでセンサーを長期間(例えば、1年間くらい)駆動しなければならない。これに対応するために、センサーノードでは、センサーからのデータ転送速度を低く抑えることで、低消費電力化を図る。
このように、ビルオートメーションのアーキテクチャは、センサーへの対応を重視したものである必要がある。
IEEE 802.15.4でセンサーに対応
IEEE 802.15.4は、インテリジェントビルにおけるセンサーの用途に適した超低消費電力、低データ転送速度のワイヤレスネットワークのアーキテクチャを定義した規格である。同規格は、免許を必要としない周波数帯域を利用し、868MHz帯で20kビット/秒、915MHz帯で40kビット/秒、2.4GHz帯で250kビット/秒で通信する低速デバイス用のPHY/MAC(media access control)サブレイヤーの仕様を定義している。868MHz帯では1チャンネル、915MHz帯では10チャンネル、2.4GHz帯では16チャンネルをサポートする。
IEEE 802.15.4のネットワーク構成はスター型またはピアツーピア型で、6万5000個以上のノードのアドレッシングが可能である。送信機は、1GHz未満の帯域ではBPSK(binary phase shift keying:2位相偏移変調)、2.4GHz帯ではOQPSK(offset quadrature phase shift keying:オフセット4位相偏移変調)を用いて、DSSS(direct sequence spread spectrum:直接拡散方式)を実現する。
なお、同仕様では、ネットワークノードを以下の2種類に分けて定義している。
- FFD(full function device):あらゆるネットワーク業務を遂行するノード
- RFD(reduced function device):コスト重視のアプリケーション向けに限定されたリソースと機能を持つノード
ZigBeeによるワイヤレス対応
ZigBeeアライアンスは、IEEE 802.15.4が定義するPHY/MAC層に加え、低データ転送速度、低消費電力のワイヤレスアプリケーションに必要なその他の層を定義した。各ネットワークには、コーディネータと呼ばれるFFDが少なくとも1つ必要となる。このコーディネータが初期化処理、ノードの管理、ノードの情報の保存を行う。コストと消費電力を低減するために、残りのノードは電池駆動の単純なRFDとすることが可能になっている。
ZigBeeネットワークは、数種類のデータ送信スキームに対応することができる。各ノードは、設定された時間に起動し、ワイヤレスセンサーなどから定期的に送られてくるデータを収集してコーディネータに送信した上でスリープ状態に戻る。一方、照明スイッチのように断続的にデータを送信するものについては、スイッチが押されたときにだけ、ネットワークと接続/通信できればよい。また、リアルタイム制御システムなどで反復データを扱うアプリケーションでは、通信において遅延や競合が生じるケースが問題となる。これについては、ZigBeeの保証タイムスロット機能を利用すればよい。こうしたネットワーク層におけるデータ送信では、通信頻度を下げることにより、RFDノードの電池寿命を長くすることが可能になる。デューティ比を小さくすれば、ボタン型電池により、ノードを何年間も稼働させることができる。
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