オープン化へと向かうビルオートメーション技術:より“賢いビル”の実現を目指し(4/4 ページ)
既存のプロプライエタリなシステムを活用しつつ、より高度な機能を実現したい――このようなニーズに応えるためのキーワードが「オープン化」であることは周知のとおりだ。インテリジェントビルを支えるビルオートメーション技術の世界にも、オープン化の波が押し寄せている。
ウェブサービスへの期待
XMLを利用した技術として、ウェブサービスが注目を集めている。一般に、ウェブサービスでは、通信プロトコルであるSOAP、サービスのインターフェースを定義するためのWSDL(Web Service Definition Language)、さらにはウェブサービスの検索/照会用のレジストリ仕様であるUDDI(Universal Description, Discovery and Integration)といった技術を利用する。XMLをベースとしたこれらの技術が相互に作用してソフトウエアスタックを形成し、ウェブサービスの存在場所を特定して機能を呼び出し、実行結果を得る。これら技術の最新仕様は、W3C(World Wide Web Consortium)や、OASIS(Organization for the Advancement of Structured Information Standards)のウェブサイトで参照/ダウンロードすることができる。
OASISは、XML/ウェブサービスをベースとしたビル管理システム機構の分野でイニシアティブをとって活動していくことを発表済みである。OASIS oBIX(open building information exchange)の技術委員会は、ビルの機械および電気システムと企業アプリケーション間の通信を可能にするための標準のウェブサービスプロトコルの定義に向けて活動している。
oBIXは、ビルオートメーションシステムを企業システムと統合することにより、機械および電気制御システムの継続的な監視や、システム解析、人間の介入に関する問題や傾向の特定を可能にする。oBIXの目的は、HVAC、アクセス制御、ユーティリティなどに対応したビルオートメーションシステムから、データを簡単かつ安全に取得するためのウェブサービスインターフェース仕様を開発することである。oBIXのアプローチには、既存の機械/電気システムと新システムが共存できるという利点がある。
拡大するシステムを支える
米Encelium Technologies社の「ECS(Energy Control System:エネルギー制御システム)」は、ビルオートメーションのための拡張可能なハードウエア/ソフトウエアシステムの一例である。フォトセンサーによる自動照明レベル調整、人感センサーによる照明レベル制御、時間帯に応じた部分照明制御、さらにはエネルギー価格の急騰に対応した照明制御を可能にする。システムの通信ネットワークにより、従業員やビルのエネルギー管理者は、照明器具、人感センサー、フォトセンサー、壁の調光器を個々にパソコンやインターネットから制御できる。ECSでは、Encelium社の中央制御ソフトウエアに対応したGUIにより、コンピュータ端末から、施設内のLAN配線を介して照明制御やその他のエネルギー管理機能を実行することが可能である(図2)。ECSの価格はシステム構成によって異なり、1万米ドルからとなっている。
ビルオートメーションがより高度化する動きの中で、設計者は、通信機能を持たない多くのスタンドアロンのサブシステムをどのように処理するかを考えなければならない。イスラエルのConnect One社は、組み込み機器向けのサーバーモジュール「ioNet」を提供している(図3)。同製品は、インターネットプロトコルを用いて、既存の産業用機器/機械に遠隔監視/制御機能を追加することを可能にする。通信用のハードウエアを備えていない、エレベータ、監視カメラ、自動販売機、ゲーム機といった機器へのインターフェースとして利用することができる。ユーザーは、機器内のデジタル/アナログ信号出力を、ioNetの端子ブロックへハードワイヤードに接続することが可能だ。
同製品により、内蔵の10/100 Base-Tポートを介してイベントのログをとったり、インターネット上でデータを交換したりすることもできる。標準的なウェブブラウザまたはConnect One社の機器接続サーバーを利用し、ウェブを介してioNetを遠隔から管理することが可能である。
既存の建造物の余命は長い。従って、インテリジェントビルが建築的資産の大部分を占めるまでには、何年も、あるいは何世代もかかるだろう。そのため、この過渡期においては、既存のシステムを完全に置き換えるのではなく、ビルオートメーションの機能を付加的に導入できる巧妙な手法を考えていく必要がある。互換性のないシステム同士がデータを共有し、遠隔からのコマンドに応答してビジネス情報アーキテクチャの一部分となるためには、現在のところ、ウェブ技術の利用が最良のアプローチだと考えられる。
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