電源サブシステム入門:各方式の課題を再確認!(1/4 ページ)
リニアレギュレータ、スイッチングレギュレータなど、「電源」と呼ばれるものには多くの選択肢がある。本稿では、その選択肢のうちのいくつかの概要とそれぞれの問題点をまとめる。
電源の種類
一言で電源といっても、ごく単純なものから、最先端の製品に組み込まれているかなり複雑なサブシステムまで、実にさまざまな形態がある。アプリケーションにも、単純なものと複雑なものがあることを考えると、これはさして驚くことでもない。以下では、まず各種電源サブシステムの概要を整理しておく。
■ツェナーダイオード
最も単純な電源サブシステムとしては、大きなツェナーダイオードを利用する方法がある。抵抗とダイオードを組み合わせるアプローチは最も単純であるが故に、最も信頼性が高いともいえる。ツェナーダイオードは大量の熱を放出するが、実際にこの方法を用いるような用途では、その熱を簡単に取り除くことができるため、問題にはならないことが多い。
■リニアレギュレータ
もう少し複雑かつ、一般的に使用されているものとして、リニアレギュレータが挙げられる。米National Semiconductor社のウェブサイトで一番よくダウンロードされているデータシートは「LM317」のものだという。
リニアレギュレータでは、内部のトランジスタ(パストランジスタ)が可変抵抗、つまりバリスタとして機能する。従来、リニアレギュレータではNPN型のトランジスタが使用されていたが、低ドロップアウト型のレギュレータの場合、PNP型のトランジスタが使用されることが多い。
■チャージポンプ方式コンバータ
チャージポンプを利用した電源サブシステムは、さらに複雑なものだといえる。複数のトランジスタをスイッチとして使用し、それらのスイッチを使ってコンデンサに電荷を送る。そのコンデンサが蓄電/放電することで、電圧源として機能する。
■スイッチングレギュレータ
スイッチングレギュレータともなると、複雑さは一気に高まる。一般に、スイッチングレギュレータによる電源サブシステムでは、インダクタンスや、スイッチとして機能するトランジスタ、制御ループが利用される。スイッチングレギュレータの完成品を購入することもできるが、部品を買ってきて自分で作製することも可能である。
スイッチングレギュレータには、降圧型(バック)、昇圧型(ブースト)、反転型、絶縁型、SEPIC(single ended primary inductance converter)型、チョーク(Cuk)型など、生成する電圧や方式などにさまざまな種類がある。
■AC-DCコンバータ
1つのDC電圧を基に、別のDC電圧を生成するものがDC-DCコンバータである。DC-DCコンバータを用いる場合にも、その入力となるDC電圧を生成するために、AC電圧をDC電圧に変換するトランスなどの回路、すなわちAC-DCコンバータが組み込まれているケースがある。
そうしたものの1つに、PFC(power factor correction)回路がある。PFC回路では、昇圧型コンバータのトポロジによって入力電流を入力電圧に比例させるため、従来のAC-DCコンバータに見られるような、入力電流の大きなスパイクは発生しない。
■デジタル電源
電源分野の新語に、「デジタル電源」というものがある*1)。この言葉は非常に広い意味で使われ、単にデジタル入力を使ってレギュレータをシャットダウン可能であるものや、レギュレータとほかのチップとの間でデジタル通信を行い、アナログPWM回路の動作を監視/管理するタイプのもの、DSPを用いたループによりPWM制御を行うものなどさまざまな種類がある。
脚注
※1…Conner, Margery, "Digital-power controllers offer digital and analog architecture," EDN, Aug 3, 2006, p.28.
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