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D-Aコンバータ出力のグリッチへの対処Baker's Best

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 D-Aコンバータの出力には、コードの遷移に伴いグリッチが生じる。多くの用途では、そのグリッチの 大きさがどうであるかは気にしなくてもよい。しかし、制御ループの構成要素としてD-Aコンバータを使用している場合には、このグリッチの大きさが問題になることがある。


図1 D-Aコンバータ出力のグリッチ
図1 D-Aコンバータ出力のグリッチ 入力データの変化が全ビットの変化を伴うものである場合、このような大きなグリッチが生じる。

 D-Aコンバータ出力のグリッチは、入力コードの変化に対応した出力電圧の変化に付随して発生する。16ビットの一般的なD-Aコンバータを例にとると、入力コードが8001h(hは16進数を表す)から8000hに遷移するときには内部で切り替わるスイッチの数は少ない。そのため、グリッチは感知できないほど微小なレベルとなる。一方、同じD-Aコンバータでも、コードが8000hから7FFFh(このコードに対する出力電圧はフルスケール出力の1/2になる)に変化するときにはグリッチは非常に大きくなり、入出力特性が一時的に非単調特性を持つかのように見える。

 図1に示したのは、16ビットのD-Aコンバータにおいて、フルスケールの1/2のポイントで発生するグリッチの例である。このポイントでは、全ビットの反転(major code transition)が生じるため、グリッチも大きい。フルスケールの1/4、3/4の電圧では、これよりも小さい中間的なレベルのグリッチが生じる。

 D-Aコンバータ出力のグリッチは、主に、内部のゲートのスイッチングに伴う充放電が原因で発生する。例えば、R2Rラダー型D-Aコンバータでは、通常、図2(a)のような2つの山を持つグリッチが生じる。それに対し、図2(b)のように、山が1個のグリッチが生じるケースもある。この種のグリッチは、ストリング型D-Aコンバータの場合に多く見られる。

図2 D-Aコンバータの種類によるグリッチの違い
図2 D-Aコンバータの種類によるグリッチの違い R2Rラダー型のD-Aコンバータでは、(a)のように正負両方向(2つ)のグリッチが生じる。この場合のグリッチの影響は、正方向のグリッチ面積(G2)から負方向のグリッチ面積の(G1)を減算したものに相当する。一方、ストリング型D-Aコンバータでは、(b)のように一方向のみ(1つ)のグリッチ(オーバーシュート)が生じる。

 D-Aコンバータをループに含む制御システムでは、全ビットの反転に伴うグリッチによって、一時的にせよ異常な出力信号が送出されることになり、制御ループにエラーが生じる。制御システムが高速に応答する特性を持っておりグリッチに反応してしまうと、そのシステムは発振する恐れがある。

 このようなグリッチの影響を軽減するために、D-Aコンバータの出力をローパスフィルタに通して使用する方法がある。この方法の場合、グリッチの振幅は減少するが、グリッチの発生している状態が持続する時間が延びる。例えば、ピーク電圧が75mVで持続時間が1.6μsのグリッチがあったとする。ローパスフィルタを用いれば、このグリッチのピーク電圧を37.5mVに半減できるが、持続時間が2倍の3.2μsとなる。

 そのほかのグリッチ対策としては、D-Aコンバータの変換タイミングと同期してD-Aコンバータの出力を再度サンプリングし、その電圧値を利用する方法が考えられる。この方法はD-Aコンバータの分解能が低い場合には有効だろうが、サンプリングに伴う精度とサンプリング時間に関連する新たな問題が起こり得る。

 グリッチ対策として最も効果的なのは、初めからグリッチ振幅が小さいストリング型のD-Aコンバータを選択することだ。

<筆者紹介>

Bonnie Baker

Bonnie Baker氏は「A Baker's Dozen: Real Analog Solutions for Digital Designers」の著書などがある。Baker氏へのご意見は、次のメールアドレスまで。bonnie@ti.com


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