モデルベース開発ツールを使いこなせ:組み込み開発の効率化を実現するために(1/5 ページ)
組み込みシステム開発チームは、新製品をいかに早く市場に送り出すかでしのぎを削っている。そのための方策として、設計者らはモデルベースの開発ツールに目を向け始めている。ますます複雑になるソフトウエア開発を迅速に行うためだ。そうしたツールの多くは、UMLをベースとしている。
開発ツールに高まる期待
従来の組み込みシステムは、コストを低減するために処理能力およびメモリーリソースの面で制約を受けていた。一方で、高速な通信や対話型のマルチメディア対応機能などをもっと多く搭載してほしいというユーザーの要求は高まるばかりである。組み込みシステムの開発プロジェクトでは、開発期間の短縮が強く求められる中で、ソフトウエアの複雑さがますます増加していった。
熟練したプログラマの人数には限りがある。そのため、設計者は、グラフィカル設計ツールやコードジェネレータを利用することでこれに対処しようと考え始めた。これまでは、組み込みソフトウエアを開発するとき、プログラマが1行ずつプログラミングを行っていたが、それらのツールを用いることで大幅に工数を削減できる可能性がある。
グラフィカル設計ツールやコードジェネレータを使う場合、最初にシステム仕様を正確に定義するための労力が必要となる。しかし、その作業さえ行えば、動作可能なソースコードを直接生成することができる。そうした機能を利用することで、ソフトウエア開発作業の一部を自動化することが可能になるのだ。
開発手法の変化、求められる新スキル
組み込みソフトウエアの開発作業にかかる工数を、コンピュータ支援によって削減しようというアイデアは悪くない。しかし、コードジェネレータに入力するシステム仕様を設計者が定義する作業は簡単ではない。現状の開発ツールでは、コードの自動生成に必要なデータを準備するまでに、設計者はかなりの学習期間を必要とし、プログラミングに対する考え方を完全に変えなければならない場合もあり得る。また、ソフトウエア開発者は組み込みソフトウエアに対する偏見を捨てて、従来とは異なる開発手法を受け入れるという心構えを持たなければならないかもしれない。
コードの自動生成に対して、多くの設計者は疑念を持っている。それまでの製品開発における経験から、コードジェネレータを利用すると、誤りを含んだコードや処理効率の悪いコードが生成されると思い込んでいるのだ。しかし最近のツールベンダーは、自分たちが提供するコードジェネレータについて、「仕様に合致した誤りのないコードを生成し、しかも手作業で作成したコードよりもコンパクトである」と主張する。
コードの自動生成は、モデルベースの設計手法における一要素である。コードの自動生成機能を利用する場合、設計者は従来のような仕様書を記述する代わりに、形式的なグラフィカル表現を用いてシステムを定義することになる。その際、作成するモデルは、開発しようとするシステムの機能や動作を明確に定義するものでなければならない。
一般に、システムモデリングに対応したソフトウエアの多くは、ユーザーが、ライブラリとして事前に準備されたブロックをGUI操作によって組み合わせることによってシステムを定義できるようになっている。それにより、モデルの作成にかかる作業負荷を軽減することが可能になる。しかし、優れたモデルを記述できるようになるためには、新しいプログラミング言語を習得するのと同程度の努力と訓練が必要である。
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