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電磁界解析ツール活用のススメ(4/5 ページ)

従来、SPICEは回路シミュレータとして広く使われてきた。しかし、電子デバイスや電子機器の高周波化/高密度化が進んだ結果、その限界が問題となってきた。SPICEでは、比較的単純な回路に対してさえも、電磁界の影響による振る舞いの詳細を検証することが困難なのだ。この問題を解決し、信号品質の検証や高周波ICの設計などで威力を発揮するのが電磁界解析ツールである。

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各種解析環境と機器

 回路の評価を行うために、電磁界解析ツールと組み合わせて使用するシミュレータとしてはどのようなものを選択すればよいのだろうか。

 いくつかのベンダーから、信号品質分野を対象とするハイエンドのシミュレーション環境が提供されている。米Cadence Design Systems社は「Spectre」によってIC設計分野をカバーする。米Mentor Graphics社はRF設計用の「Eldo」を、米Synopsys社は有名な「HSPICE」を提供している。Synopsys社の製品としては、ハーモニックバランス手法による周波数領域の解析にも対応した「HSPICE-RF」もある。米Ansoft社は有名な大規模回路シミュレータエンジン「Nexxim」を提供している。Nexximは、同社の統合設計環境「Ansoft Designer」を核とし、3D電磁界解析ツールである「HFSS」、「SiWave」、「Q3D」などと連携する形で使用する。

 このようにいくつもの製品があるが、おそらく最も洗練された電磁界解析ツールは「COMSOL Multiphysics」であろう。これはスウェーデンのCOMSOL社が開発したもので、有限要素法と偏微分方程式を組み合わせて、流体解析、構造解析、熱伝達解析や電磁界解析などが行える。COMSOL Multiphysicsでは、解析対象材料の物性/形状が熱伸縮や磁気飽和によって変化する場合の解析も可能である。

 図3(a)(b)は、それぞれ電源トランス、スパイラルインダクタの電磁界解析結果である。COMSOL MultiphysicsではSPICE用ファイルによる解析も可能だが、そのSPICE解析機能自体は、Cadence社、Ansoft社、Synopsys社、Applied Wave Research社、Agilent社などのツールに比較すると貧弱である。

図3 COMSOLMultiphysicsによる解析結果の例
図3 COMSOLMultiphysicsによる解析結果の例 (a)は、磁気飽和に伴う非線形磁気特性を有するトランスの解析結果。(b)は3次元スパイラルインダクタの解析結果である(提供:COMSOL社)。

 Agilent社は、マイクロ波分野に起源を持ち、信号品質問題も対象にできる大規模環境「ADS」と、個人や中小企業向けのデスクトップ用環境「Eagleware」を提供している。Applied Wave Research社の「Microwave Office」と「Analog Office」は、信号品質と周波数の解析に使用できる(図4)。また、米The MathWorks社は、「MATLAB」上で動作する、RF回路の設計/信号品質解析に利用可能なソフトウエアをつい最近発表した。

図4 統合シミュレーション環境の例
図4 統合シミュレーション環境の例 回路図入力、時間領域/周波数領域シミュレーション、レイアウト設計や電磁界解析ツールなどの機能を含み、信号品質の解析、RF回路の設計に使用できる(提供:AppliedWaveResearch社)。

 プリント基板の回路設計者は、信号品質の問題に苦労してきた。この分野で有名なシミュレーションソフトは、Mentor Graphics社の2.5D解析ソフト「HyperLynx」である。これは同社の回路図/基板レイアウト用CADツールである「PADS」と連携させて使用できる。また、HyperlynxではCadence社の基板用CADツール「OrCAD Layout」からの出力も利用可能である(図5)。

図5 OrCADLayoutの操作画面
図5 OrCADLayoutの操作画面 基板パターンのデータをHyperlynx向けに出力できる。

 ちなみに、OrCAD Layoutと「OrCAD PCB Editor」は異なるものであり、後者はレイアウト設計用の大規模パッケージソフト「Allegro」から関連機能を独立させたものだ。OrCAD PCB Editorを使用する場合には、その本体であるAllegroとシームレスな動作が可能なCadence社の信号品質解析パッケージソフトを併用すると効果的である。

 さらに、プリント基板レベルの信号品質解析パッケージソフトとして注目すべきものとして、オーストラリアAltium社の「Altium Designer」が挙げられる。単体でのライセンス料が5000米ドルと安価で、さらに5000米ドルを支払うことにより回路図入力機能とSPICEエンジンも使用できる。

 一方、Hyperlynxのライセンス料は、ライセンス条件(固定にするかフローティングにするか)、あるいは機能(損失伝送線路をサポートするか否か)などの条件に依存するが、5000米ドルから4万8000米ドルになる。Cadence社、Ansoft社、Synopsys社、Agilent社などが提供する大規模設計環境は、単体モジュールは約5000米ドルから、電磁界解析ツールとレイアウト設計機能を含む統合シミュレータは5万米ドルまたはそれ以上の金額となる。Microwave OfficeやEaglewareなどのデスクトップ用ならば、5000米ドルから2万5000米ドルで必要な機能を確保できる。

 例えばCadence社のハイエンド設計環境に対しては多くのサードパーティ製ツールが提供されている。そうしたサードパーティ製ツールは、特定の機能を有するシミュレータなどとして統合設計環境に組み込むことができる。実際、Ansoft社は、同社のシミュレータやレイアウトツール、電磁界解析ツールなどのソフトをCadence社の設計環境に組み込み可能なように工夫している。

 そのほかにも、表1に示すような各種製品がある。

表1 そのほかの電磁界解析ツール
表1 そのほかの電磁界解析ツール

 オンラインショップのeBayでは、電磁界解析ツールによる解析結果を検証するための試験機器が2000米ドル程度で調達できる。最新/最高速のVNAやTDRの場合、6万米ドル程度を要する。

 ここで紹介したソフトウエアや機器は非常に高価に思えるかもしれない。しかし、ICや基板の再設計/製造などに要するコストを考えると、シミュレーションソフトや検証用ハードが高価すぎるということはない。

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