Jakeという名前の高校生から手紙をもらった。その手紙には理科系のクラスを代表して、いくつかの質問が書かれていた。今回は、いつもと趣きを変えて、彼の質問と私からの回答を紹介することにしよう。
Jake:今の職業に興味を持つようになったきっかけは何ですか。
Howard:私の父は原子核物理学者。その影響で、各種事象の仕組みについて強い好奇心を持つようになった。父の蔵書のうち、最初に読んだのが『数表と公式のハンドブック(Handbook of Mathematical Tables and Formulas)』という本だ。その本に書かれている記法の意味は理解できなかったが、その本には何か大きな秘密が含まれていそうだということは分かった。
その後、学校で、クラスメイトが足し算や引き算を学習しているときに、私は平方根や複素数について勉強するようになっていた。ある日、父から電池と電流計をプレゼントされ、そのときから私は電気工学に夢中になった。
Jake:私たちが受けている教育や各人の目標といったことについて、クラスメイトにお話しをいただけるとすれば、どのようなものになるでしょうか。
Howard:何か趣味を持つようにしよう。人は趣味を通していろいろと勉強するものだ。成功する人は、99%の知識を学校の勉強以外から得ている。これは、学校をサボれということではない。人は皆、学校で教わることの100倍ものことを学ばなければならないのだ。趣味を通して思考力が鍛えられ、夢の実現に向かって努力する人間になれる。成功する人間は学ぶことが好きなものだ。
何か優れた技量や知識がなければ、人はお金を得るために自分の時間を売ることになる。彼らが提供できるものは時間しかないからだ。教育を受けていない人が得られる報酬は、米国では1時間当たりわずか7米ドル程度だ。
成功する人の人生の進め方はそうではない。彼らは金銭のために時間を売ることはしない。Robert Kiyosaki氏が著書『金持ち父さん貧乏父さん(Rich Dad, Poor Dad)』で書いているように、成功する人は価値を創造し、その価値をお金に換えるようにする。
私の場合、そうした価値を作り出すための道は、高速デジタル設計技術の学習から始まった。その技術に習熟した後、その分野のセミナーの講師を務めた。顧客から得られる報酬は、講習にかけた時間に対するものではなく、それまでに蓄積した経験と、その経験に基づいて、受講者の技術力、あるいは彼らの生活そのものを改善/向上させることのできる能力に対して支払われる。これが価値というものだ。
このような価値ある能力にはさらによいことがある。私の場合でいえば、1つの経験を繰り返し売っていることになるのだから。これまでにおよそ250 回のセミナーをこなしてきたし、これからも継続して行っていくつもりだ。価値を活用する道とはこういうもので、使い果たすということがない。
Jake:科学的な知識は日常生活に役立ちますか。
Howard:教育者からよくこのような質問を受けることがある。これは子供たちに科学を学ぶ必要性を納得させるための明確な根拠を得たいからだろう。しかし、すべての人が納得できる答えは私には考えつかない。実際、科学的な知識は誰にでも必要というわけではないからだ。その気になれば、裸で森の中を走りまわり、弓と矢で鹿を狩るといった生活も、おそらく可能だろう。
ただし、この考え方には落とし穴がある。技術力を持たない数億もの人が北米に住むとなると、面積も資源も不足する。工業生産が行われなければ、膨大な数の人が死んでしまうだろう。ここに、科学教育の基本的な目的がある。すなわち、物事がどのように働くのかを知りたいと思う人を見つけ出し、彼らを励まして、彼らが知的生産を行うことでほかの人を助けてくれるようにすることがその目的だ。
Jake:これまでに学んだことの中で最も重要だと思うことは何ですか。また、その理由も教えてください。
Howard:世界中の資源をコントロールし、世の中の将来を左右するような人とその他の人との間に、大きな知的能力の差異があるわけではない。違いがあるとすれば、決意の固さと意志の力だけだ。Jake君、君の成功を祈る。
<筆者紹介>
Howard Johnson
Howard Johnson氏はSignal Consultingの学術博士。Oxford大学などで、デジタル・エンジニアを対象にしたテクニカル・ワークショップを頻繁に開催している。ご意見は次のアドレスまで。 www.sigcon.comまたはhowie03@sigcon.com。
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