WiMAXは4G携帯の本命か?:間近に迫るモバイルブロードバンド時代(4/5 ページ)
Mobile WiMAXに対する注目が高まっている。例えば、Sprint Nextel社は、Intel社、Samsung Electronics社、Motorola社と提携し、米国内のモバイルブロードバンドの展開において同技術の利用を推進していくとの方針を打ち出している。このMobile WiMAXが4G携帯電話の実体となるのだろうか。
Mobile WiMAXとWiMAX Forum
WiMAXとは、業界の標準化団体がIEEE 802.16として定義する技術群を一般的に指す名称である。IEEE 802.16d規格は、固定サービスの加入者のためのブロードバンドワイヤレス体系を定義するものである。その後、定められた802.16e規格は、モバイルシステムの加入者をサポートする。どちらの規格にも広範囲にわたるさまざまな実現方法が存在する。WiMAX Forumはこれらの技術を市場に導入する役割を果たす。同フォーラムは、規格が定義する要件のサブセットを抽出し、WiMAX Forum Mobile System Profileなどのプロファイルを開発している。また、WiMAX Forumは適合テストと準拠製品の認定を行う。
固定サービス向けのWiMAXは、業界において一般的に最大の周波数利用効率を実現すると見なされているOFDM技術に基づいて開発された*A)。Mobile WiMAXでは、より新しい変調方式で、MIMO(multiple input multiple output)技術を含むOFDMA(orthogonal frequency division multiple access:直交周波数分割多重アクセス)を使用する。これによってモバイル性が加わり、マルチパス干渉が大きく軽減され、チャンネルの状態変化に対応する手法が実現される。これはモバイルシステム市場では必須の機能である。またMobile WiMAXには、モバイルシステムのユーザーをセルからセルへと移動させるためのセッション管理機能も含まれている。
多くの分野でそうであるように、ワイヤレスWAN技術においても仕様上の数字が存在する。Mobile WiMAXは仕様上、70メガビット/秒の双方向データ伝送が可能であるが、このデータ速度は通信距離やそのワイヤレスチャンネルなどの要因に依存する。さらに、同規格はサービスプロバイダが通信距離、通信容量、帯域幅の間でのトレードオフに適応することを可能としている。初期段階では、Mobile WiMAXは通常約10メガビット/秒の通信速度しか達成せず、その速度さえもセル内のユーザー数に依存することになる。Sprint Nextel社は、同社ネットワークのユーザーには、2メガビット/秒〜4メガビット/秒の通信速度が提供されることになると述べている。
固定か、モバイルか
Mobile WiMAXに対応する実装の多くは、固定システムのユーザーもサポートする。Clearwire社は特に固定システムのユーザーをターゲットとしており、Sprint Nextel社からの最初のWiMAX製品にはデスクトップモデムが含まれる予定である。
世の中はなぜモバイル化へと進んでいるのだろうか。モバイル性を付加することにより固定の場合よりもシステムは複雑になり、変調方式もより複雑となる。セル間におけるハンドオフ接続(ハンドオーバー)の要求も生じるためコストが高くなる。なぜ固定システムのみに対応したより低コストの実装を求める市場が存在しないのだろうか。
Intel社のNardone氏によると、固定システムのみを要求する顧客の数は少ないため、コストを下げることができないという。需要の多いシステムであって、初めて市場全体規模で見れば経済性を実現することができる。
また、IEEE 802.16e規格は同802.16d規格よりも複雑だが、WiMAX Forumが定義するモバイルプロファイルは、802.16e規格のサブセットである。例えば、同フォーラムのプロファイルでは、基地局とクライアントが同一の双方向通信チャンネルを共有するTDD(time division duplex)方式のみを定義する。802.16e規格では、TDDのほかに、2つのチャンネルを用いて上りと下りのデータ伝送を行うFDD(frequency division duplex)方式も定義されている。またモバイルプロファイルに定義される周波数帯域に関するオプションも、広範囲なIEEE規格と比較すると少ない。
脚注
※A…Wright, Maury, "WiMAX wireless broadband:Fixed-flavor questions abound, mobilelurks," EDN, March 31, 2005, p.44.
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