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オーディオ品質とクロックジッターデジタルオーディオが抱える潜在的課題に迫る(3/5 ページ)

昨今のデジタルオーディオシステムでは、アナログ時代には存在しなかった問題が顕在化してきている。本稿では、まず、その問題の原因であるクロックジッターについて説明する。その上で、各種実験結果を基に、クロックジッターがオーディオ信号に与える影響を具体的に示す。さらに、デジタルオーディオシステムにおけるジッター対策の手法についても触れる。

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各種発振器のクロックの質

 先述したように、デジタルオーディオ機器の高機能化とともに、クロック発生回路の主流は水晶からPLLへと移行した。ここでは、各種発振器の実際のスペクトラムを示すことで、各種クロックの質の違いを確認したい*3)

 図1は、一般的な水晶発振モジュールを、実験室で使用する安定化電源で動作させた場合の出力スペクトラムである。この水晶発振器のスペクトラムを基準として、ほかの発振器のクロックの質を眺めることにする。


図1 一般的な水晶発振モジュールの出力スペクトラム
図1 一般的な水晶発振モジュールの出力スペクトラム 
図2 図1で使用したモジュールをリップルの多い電源で動作させた結果
図2 図1で使用したモジュールをリップルの多い電源で動作させた結果 
図3 映像機器用PLLの出力スペクトラム
図3 映像機器用PLLの出力スペクトラム
図4 RF信号発生器の出力スペクトラム
図4 RF信号発生器の出力スペクトラム

 図2は、上記の発振モジュールをややリップルの多い電源で動作させた場合のスペクトラムである。図1と比較すると、電源に起因するスペクトラムが明らかに増えている。このことから、電源を疎かにすると発振器の性能を生かせないことが分かる。実際のセットでは、オーディオのクロック回路は単なるデジタル回路として扱われ、この重要な発振回路の電源がおろそかにされがちだ。しかし、どれほど上等な発振回路を使用しても、電源の質が悪ければ意味がないことに留意したい。

 図3は、映像機器で用いられるPLLの出力スペクトラムである。このPLLは、映像系の27MHzのクロックを基に、それに同期したオーディオ系のクロックを生成する。DVDプレーヤ/レコーダなどで用いられているものであり、かなり低ジッターな部類の製品だが、やはり水晶発振器との間には大きな差がある。

 図4は、主に通信システムの開発で使用される超低位相雑音(ジッター)タイプのRF信号発生器の出力スペクトラムである。ノイズフロアは十分に低く、またスペクトラムが根元まで細い。水晶発振器と比較しても、かなり高品質であることが分かる。

 このように、一口にクロックといっても、その質には違いがある。しかも、その使い方次第では十分な性能が得られないことがあるのだ。


脚注

※3…ここで示す測定結果は、各発振器の違いを明確にするために、スペクトラムアナライザの周波数分解能を最大限(RBW=1Hz)に上げて取得したものだ。このような条件であるため、電源に起因するスペクトラムが現れている(クロックのスペクトラムから50Hzごとに見える線スペクトラム)。この点は、スペクトラムアナライザのスプリアス性能の問題であることをご承知願いたい。


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