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ソレノイドを使いこなす(2/5 ページ)

ソレノイドを利用したシステムを構成するには、その特性を十分に理解するとともに、どのような制御回路方式を採用すべきかを熟慮しなければならない。本稿では、閉ループの電流制御方式を用いた設計の例を具体的に示す。

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動作パラメータの検討

 ソレノイドは、駆動の対象として見ればインダクタとして扱うことができる。しかし、駆動用の電源や回路を設計する際には、ソレノイドのその他の特性についても検討しなければならない。ソレノイドはインダクタンスを得るためのものではなく、所望のトルクを得るためのものだ。また、ソレノイドではプランジャが動くと、そのインダクタンス値が変化する。つまり、動作中のソレノイドは可変インダクタンスであるかのような電気的特性を示す。

 ソレノイドが発生するトルクは磁界強度に依存する。その磁界強度はコイルに流れる電流と巻き数の影響を受ける。トルクを高めるには、コイルの電流あるいは巻き数を増やす必要がある。そして、その電流はボビンに巻かれたコイルのインダクタンスと直流抵抗によって上限が決まるという関係にある。

 本稿で例にとる用途では、小型のソレノイドを用い、その初期インダクタンスは3.3mH、直流抵抗は15Ωであるとする。このソレノイドがバネの力に打ち勝ってバルブを開くためには、2.2Aの引き込み電流を5ms、0.75Aの保持電流を2s程度供給する必要があるとしよう。このような電流/時間プロファイルの駆動シーケンスの後に、20ms以内のオフ時間を経て次の駆動シーケンスが始まるものとする。コイルの直流抵抗と所要電流を基に計算すると、必要な出力電圧は、引き込み時に33V以上、保持時に11.25V以上となる。

 ほかにもいくつか考慮すべきことがある。コイルに電流が流れると、その電流の2乗に比例する電力が消費され、その結果、コイルの温度が上昇して抵抗値が高くなる。その発熱の程度はコイルの線材の太さによって変わる。発生した熱は、ソレノイドの熱容量にもよるが、20msという短いオフ時間では十分には発散されない。この例におけるソレノイドは、AWGゲージ#36の電線が約435インチ(約11m)巻かれたものだとしよう。このソレノイドのコイルの温度は、ヒューズに流れる電流の計算式を利用した次式から推算できる。

 ここで、Sは電流の印加時間(単位はs)、TはS秒経過後のコイル線材の温度、Aは線材の断面積(単位はインチの2乗)、Iは印加電流、TAは周囲温度である*1)

 一方、線材の抵抗値の計算式は次式となる。

 ここで、R20は20℃での抵抗値、a20は20℃における銅の抵抗温度係数(=0.00393)、tは変化後の温度である*2)

 これらの式を用いて前述した電流/時間プロファイルの動作に対して計算を行うと、最初のシーケンスの後の線材抵抗値は15Ωから17.3Ωに上昇することが分かる。その結果、2回目のシーケンスでは引き込みに必要な電圧が38.1V(=2.2×17.3)に上昇し、保持電圧は13V(=0.75×17.3)となる。ここで計算した温度上昇値には、エンジン自体からの熱の影響は含まれていない。また、直流抵抗の計算値は線材の抵抗ばらつきの影響を含んでいない。

 さらにシーケンスが続くと、ソレノイドの温度は一層上昇して抵抗値が大きく増加する。その結果、電源から供給される電流が不足して引き込みが行えなくなる。言い換えれば、エンジンへの燃料供給が適切に調節されなくなるか、あるいはまったく停止してしまうということである。

 直流抵抗が変化すると、ソレノイドの引き込み時間などが変化する。また、直流抵抗の変化はコイル電流の立ち上がり時間(充電時間)にも変化をもたらす。図3に示したのは、温度による充電時定数の変化をPSpiceによってシミュレーションした結果である。この結果は、電源電圧38Vの条件で、温度の変化に伴って、直流抵抗が15Ω(R1)から17Ω(R2)に変化したときの電流の立ち上がり特性を表している(インダクタンスは10mHとした)。これによれば、温度が上昇した後のソレノイドに対しても2.2Aの引き込み電流を供給できる。ただし、引き込み電流に達するまでの時間に1msの違いがあることも分かる。引き込み電流のレベルに達するまで、ソレノイドは力を発揮できないので注意が必要である。

図3 ソレノイド電流の立ち上がり特性
図3 ソレノイド電流の立ち上がり特性 

脚注

※1…Wong, Han M, "Wire sizes and insulation materials for high-temperature applications," Missile Design and Development, March 1960, p.80.

※2…Graf, Rudolph F, Electronic Data Book, Third Edition, 1983, McGraw-Hill Professional Publishing, ISBN 0830615385, p.360.


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