本稿では、信頼性が高く、安価で、簡単な構成のインダクタンス測定用回路を紹介する。図1の回路は、CMOSインバータを増幅器とするピアース発振回路を応用したものである。この回路では、通常は水晶振動子が接続される位置に、測定の対象とするインダクタを配置している。この発振回路に用いるCMOSインバータは、抵抗R1により線形動作領域に入るようバイアスされ、ゲインの高い反転アンプとして働く。インバータを高ゲインのアンプとして用いるので、消費電力が少なく、小信号入力に対しても大振幅の出力が得られる。
図1において、π型LC回路は並列共振回路を構成し、その共振周波数はfo=1/(2π√LxCs)、周期ToはTo=2π√LxCsとなる。ここで、CsはコンデンサC1とC2を直列接続した場合の合成容量値に相当し、Cs=(C1×C2)/(C1+C2)で求められる。図1の例であればCs=50nFとなる。これらの式から分かるように、共振周波数foまたは周期Toを測定すれば、インダクタンスLxを求めることができる。
発振条件を満たすには、共振周波数foにおけるループでの位相差が360°になり、ループゲインが1より大きいことが必要である。π型LC回路では、共振周波数において入力と出力の間の位相差が180°になる。図1の回路では、インバータIC1Aが残りの位相差180°を与えるとともに、回路内での減衰を補償するに十分なゲインを与える。
抵抗R1の値は1Ω〜10MΩといった具合に、まったくクリティカルではない。抵抗R2がIC1Aの出力とLC回路を分離しており、IC1Aの出力はほぼ矩形波になる。また、R2は共振周波数近辺での位相変化率を増大させ、発振周波数を安定化させるように働く。
最良の動作を得るには、C1、C2としては自己インダクタンスの小さいものを使用する。例えば、米Vishay Intertechnology社のポリプロピレンフィルムコンデンサ「MKP1837」の1%精度品などを使用するのがよい。標準精度のフィルムコンデンサを使用することもできるが、その場合、容量値を正確に測定して選別する必要がある。
なお、回路の消費電流はわずかなので、電源として電池を使用できる。
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