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タッチパネルの原理Baker's Best

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 その昔、米AT&T社のキャッチフレーズに「Reach out and touch someone(受話器さえ手に取れば、遠くの人とも理解し合える)」というものがあった。技術者にとっても、電話をかけるという簡単な手段により、混乱の種になりそうな問題を解決できるケースは多いだろう。しかし、電話による会話では不十分なこともある。そのような場合には、1枚の絵が千の言葉にも値することになる。そこで登場する便利なツールがタッチパネルだ。例えば、タッチパネル上で回路図を描き、それを直ちに関係者に送付するといった使い方により、情報の伝達をより効果的に行うことができる。

 タッチパネルと人をつなぐインターフェースはアナログだが、内部の電気的な処理はデジタルで行われる。つまり、タッチパネルでは、アナログ量である人の手の動きをデジタルコードに変換していることになる。

 タッチパネルはさまざまな方式/構造で実現される。手の動きの検出は、抵抗膜、静電容量、SAW(surface acoustic wave:表面弾性波)、IR(infrared:赤外線)などを利用して行われる。これらのうち、本質的に安定で、コストも手ごろな抵抗膜方式が最も一般的に使用されている。

 抵抗膜方式のタッチパネルには、電極の配置の違いによって4線式、5線式、7線式、8線式といった種類がある。最も一般的な構造は4線式だ。4線式の抵抗膜方式タッチパネルは、最上層に柔軟性を備えた(フレキシブルな)矩形のフィルムがあり、以下、ITO(酸化インジウムスズ)材料を使用した透明導電膜、絶縁性のスペーサ、もう1つの透明導電膜が層を成し、最下部に固定基板を持つという構造になる(図1(a))。圧力が加わらなければ、2層の透明導電膜の間は微小なスペーサによって一定の間隔に保たれる。

 パネルの最上層(図では省略している)は十分な柔軟性を持ち、表面が押されたときには、2層の透明導電膜が接触するようにその部分がへこむ。つまり、指やタッチペン(スタイラス)でパネル表面(最上層)を押すと2層の透明導電膜が接触する。すると、透明導電膜の両端の銀ペースト電極を介して電流が流れ、そのとき発生する電圧値をA-Dコンバータを利用してモニターすることで位置を検出する。

 例えば、図1(a)の黄色で示す透明導電膜Xの対向電極X+とX−に2.5Vの電圧が印加されているとする。そのとき、X軸の一端から1/3の位置をタッチペンで押すと、透明導電膜Yの対向電極Y+とY−の間には0.833Vの電圧が生じる。この電圧値は、対向電極X+とX−との間に印加された電圧が抵抗分割によって分圧された結果として得られる(図1(b))。対向電極X+またはX−からの出力をA-Dコンバータに入力することで、X軸上のタッチペンの位置が検出されることになる。同様に、Y軸上の位置の検出は、図で緑色で示した透明導電膜Yの対向電極Y+およびY−に電圧を印加することで行う。

 このように、抵抗膜方式タッチパネルの構造は単純である。しかし、これを使用すれば、世界中の人とより円滑にコミュニケーションをとることが可能になる。

図1 抵抗膜方式タッチパネルの構造
図1 抵抗膜方式タッチパネルの構造  2層の透明導電膜に加えられた圧力の印加点を検出する(a)。等価回路は(b)のような抵抗分圧回路になる。

<筆者紹介>

Bonnie Baker

Bonnie Baker氏は「A Baker's Dozen: Real Analog Solutions for Digital Designers」の著書などがある。Baker氏へのご意見は、次のメールアドレスまで。bonnie@ti.com


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