AC-DC電源設計の秘訣:ここが小型化、効率化のポイント!(2/3 ページ)
電源の設計において、機能/動作の仕様を満たすようにするのは当然のことである。しかし、満たすべき事柄はそれだけではない。EMC性能や安全性などに関する国際規格に従いつつ、さらに高効率化、小型化の要求にも応えなければならない。本稿では、電源の基本性能を犠牲にすることなく、そうした要求に応える方法を紹介する。
入力スイッチ
欧州では、240Vの交流電源が用いられている。実際の値は最大264VAC(実効値)であることから、電源回路の入力スイッチに求められる耐圧としては、その√2倍の約370Vが基本となる。ここで注意すべき点は、スイッチを開いたときに入力トランスの1次側に保存されたエネルギによる逆起動力が発生することだ。1個のMOS FETによってスイッチングを行う場合、この逆起電力を考慮すると、1000V耐圧の製品を使用する必要がある(図1(a))。このような高耐圧のMOS FETを入手するのも不可能ではないが、非常に高価格なものしか手に入らないだろう。また、そのオン抵抗は40mΩにも達するはずで、それによって電源の効率が低下してしまうことになる。さらに、逆起電力による高い電圧スパイクによりMOS FETが破損しないようスナバー回路やトランスにリセット巻線などを追加する必要がある。そのため、部品数、コスト、面積/体積が増加するという問題もある。
こうした問題を解決するには、図1(b)のように500V耐圧のMOS FETを2つ(S1、S2)使用するのが賢い方法だ。このスイッチは、トランスの2次側から同時にスイッチングされる。また、ダイオードは入力電圧よりも約1V高い電圧によって導通し、逆起動力による電圧を逃がす働きをする。このダイオードによって、入力コンデンサやMOS FETが保護され、スナバー回路が不要になるという利点がある。
図1(b)のように500V耐圧のMOS FETを用いた場合のコストは、1000V耐圧のMOS FETを用いた場合と比較して約6分の1で済む。また、500V耐圧のMOS FETは多くのベンダーが販売しており、オン抵抗が5mΩと低いものも存在する。
SiCダイオード(整流器)
PFC(power factor correction:力率改善)のための昇圧コンバータには、整流器が用いられる。この用途にSiC(シリコンカーバイド)ダイオードを採用するのは、高コストで現実的ではないと考える人も多い。しかし、SiCダイオードを用いることによって部品数の削減や組み立て作業の簡素化、プリント配線板の省面積化などが実現できるため、トータルで考えればさほど高コストではない。
また、SiCダイオードを用いることによって、電力効率を1%ほど改善できるという利点もある。
図2に示したのは、従来のSi(シリコン)ダイオードを用いる場合に必要となるスナバー回路である。Siダイオードは逆電流が大きいため、図2のように、3つのダイオード、2つのコンデンサ、1つの抵抗、1つのインダクタで構成されたスナバー回路で逆電流のエネルギを消費させる必要がある。
一方、SiCダイオードの逆電流はSiダイオードと比較して無視できるほど小さいため、これらの6つの部品は不要であり、また損失が減少して効率が向上するのだ。SiCダイオードは、米Cree社やドイツInfineon Technologies社などが提供している。
制御回路
AC-DCスイッチング電源の設計では、リード部品と表面実装部品を組み合わせるのが今日でも一般的である。それらの組み合わせにより、制御機能を実現する。
制御回路の実装方法について考えると、表面にリード部品を実装し、裏面に表面実装部品を配置するのがよいだろう。このような考え方に基づけば、実装面積の削減を図ることができる。
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