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電流帰還型オペアンプのメリットBaker's Best

「電流帰還型」という言葉からは、あるいは何か特別なものであるかのような印象を受けるかもしれない。しかし、いずれの方式であっても、それを使ったオペアンプ回路としての基本的な構成には違いはない。ただし、回路構成以外の部分では、いくつかの重要な違いがある。

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 高速化が要求される回路では、電流帰還型のオペアンプが使われることが多い。電流帰還型オペアンプは、電圧帰還型オペアンプよりもスルーレートがはるかに高いからである。

 「電流帰還型」という言葉からは、あるいは何か特別なものであるかのような印象を受けるかもしれない。しかし、いずれの方式であっても、それを使ったオペアンプ回路としての基本的な構成には違いはない。ただし、回路構成以外の部分では、いくつかの重要な違いがある。

 大きな違いの1つは、回路に用いるフィードバック抵抗についてである。

 電圧帰還型オペアンプを使用する場合には、フィードバック抵抗の値を広い範囲から選択できる。その最小値はオペアンプの駆動能力によって決まり、その最大値は回路のノイズによって制限される。

 一方、電流帰還型オペアンプを使用した回路では、フィードバック抵抗の値を一定の狭い範囲内で選定しなければならない。フィードバック抵抗の値が小さすぎると、オペアンプ回路の安定性が劣化するからである。逆に、フィードバック抵抗が大きすぎると帯域幅が制限されるという問題が生じる。従って、フィードバック抵抗を選ぶ際には、使用する製品のデータシートに記載された推奨条件を満たすようにするのが望ましい。

 図1に示したのは、電圧帰還型オペアンプと電流帰還型オペアンプのどちらでも利用可能な回路構成の例である。この回路において、フィードバック抵抗RFの値が入力抵抗RINの値の2倍に等しいとする。その場合、各入力ラインに対する閉ループゲインは−2〔V/V〕となる。ここで注意しなければならないのは、この回路全体の帯域幅は、このオペアンプのゲイン帯域幅積(GB積)を閉ループゲインである−2によって単純に割った値にはならないということだ。

図1 複数の入力ラインを持つオペアンプ回路
図1 複数の入力ラインを持つオペアンプ回路  電流帰還型オペアンプを使用してこのような回路を構成した場合、入力ライン数が増減しても閉ループでの帯域幅は一定に保たれる。

 図1の回路を電圧帰還型オペアンプあるいは電流帰還型オペアンプで構成する場合、気を付けなければならないのはノイズゲインである。その値は次式のようになる。

 ここで、Nは入力ラインの数である。この回路の帯域幅は、電圧帰還型オペアンプを用いる場合、そのオペアンプのゲイン帯域幅積をノイズゲインで割った値となる。例えば、ゲイン帯域幅積が180MHzの電圧帰還型オペアンプを使用し、入力ライン数が3(N=3)、各入力ラインのゲインの絶対値がRF/RIN=2であると仮定する。その場合、この回路全体の帯域幅は25.7MHzになる。つまり、入力ライン数が増えれば、各入力ラインのゲインを一定の値に保っても回路全体の帯域幅は減少することになる。

 一方、電流帰還型オペアンプを用いて同じ回路を構成したとする。その場合、帯域幅は、そのオペアンプの閉ループゲインと入力ラインの数の影響をほとんど受けない。従って、電流帰還型オペアンプを用いてこの回路を構成する場合、その設計フローは、まず最初にデータシートの推奨条件とノイズゲインの観点からフィードバック抵抗の値を最適に設定し、次に入力抵抗RINの値を設定するというものになるだろう。

 しかし、実際にこのような設計を行った結果、入力ライン数を増やすと入力ラインごとに帯域幅にバラツキが生じたり、ゲイン特性にピーキングが生じたりすることがある。

 このような問題を解決するにはどうすればよいのか。それには、設計フローの最初の段階に戻り、フィードバック抵抗の値をより詳細に見直す必要がある。その際に着目すべき点は、ノイズゲインは電流帰還型オペアンプと電圧帰還型オペアンプのいずれに対しても前出の式によって決まるのだが、閉ループでの帯域幅については、電流帰還型オペアンプの場合、フィードバック抵抗を小さくすることによって増大できるということだ。

<筆者紹介>

Bonnie Baker

Bonnie Baker氏は「A Baker's Dozen: Real Analog Solutions for Digital Designers」の著書などがある。Baker氏へのご意見は、次のメールアドレスまで。bonnie@ti.com


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