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メカトロニクス設計の「今」を俯瞰する(3/3 ページ)

多くの組み込み技術者が「メカトロニクス」に注目している。機械工学と電子工学を融合することにより、従来にない利便性を顧客に提供できるからだ。本稿では、まずメカトロニクスとはどのようなものなのかを説明した上で、その設計/開発に利用可能な各種ツールを紹介する。

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ハイブリッド型の開発環境

 米National Instruments(NI)社と米SolidWorks社は、メカトロニクス設計者に向けて電気的/機械的なモデル化とシミュレーションを広範にサポートするための共同開発を行っている。両社が最近公開した「Mechatronics Toolkit」のアルファ版は、機械/制御を統合的に扱うシステムを、プロトタイプ開発や製造工程の前にソフトウエアでシミュレーションすることを可能にする。具体的には、以下のようなことが行える。

  • 1つの部品の仕様を決定する前に、質量や摩擦による効果、サイクル時間、個々の部品のメカニカルな動作性能などをシミュレーションすることができる
  • ソフトウエアモデルにより、制御システムやフィードバック系を調整したりカスタマイズしたりすることができる
  • 部品に過度な負荷をかけることなく、極限の動作状態における電気的な性能やリアルタイムの応答時間をテストできる
  • プロトタイプから製造へと移行する際には、シミュレーションで用いたのと同じソフトウエアを再利用することができる

 Mechatronics Toolkitでは、複数のグラフィカル設計ツールを連携させ、電気、機械のそれぞれを扱う環境間でパラメータをやりとりする。3D設計ツールの「SolidWorks」には、メカニカル設計、検証、動きシミュレーション、データ管理、プロジェクトにおけるコミュニケーションのためのツールが含まれている。また、SolidWorksの仮想プロトタイプ用アドオン製品である「COSMOSMotion」は、機械力学を用いて動作シミュレーションを支援する。他方、NI社の「LabVIEW」は、電気/制御システムの設計、シミュレーション、自動コード生成をサポートする。制御設計向けのLabVIEWと、メカニカル設計向けのSolidWorks/COSMOSMotionの組み合わせにより、メカの動作とそれに対する制御の閉ループシミュレーションが可能となる(図2)。NI社は、これらのツールがどのようにしてメカニカル設計、制御設計、電気設計をサポートし、センサーやアクチュエータ機能と信号処理を統合するのかを示す、無償のメカトロニクスリソースキットを提供している*2)

図2 MechatronicsToolkitの操作画面
図2 MechatronicsToolkitの操作画面

ツールの活用がポイント

 ここまでに述べたような技法/ツールのいずれからも、設計、プロトタイピングなどを合理的に進め、メカトロニクスの開発を改善しようとする業界を挙げての姿勢が見てとれる。最新のメカトロニクス技術により、低リスク、低コストの開発と効率の改善による増益が期待できる。その恩恵を享受するためには、グラフィカルなモデリング機能とシステムシミュレーションを用いた新しい設計戦略を採用する必要がある。

 最近では、システムをモデル化し、マイクロプロセッサやカスタム回路を搭載したFPGAを自動的に再構成し、メカニカル制御回路を最適化してから、必要なソフトウエアを合成するツールが登場してきている。こうしたツールを利用すれば、開発期間が大きく短縮され、機器設計者やソフトウエア開発者の負荷はかなり軽減されるだろう。


脚注:

※2…Mechatronics Resource Kit, National Instruments.


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