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デジタルビデオが変える組み込み機器の未来(3/3 ページ)

民生用デジタルビデオの普及によって、組み込み機器にビデオ機能を搭載するための開発ツールやチップ/モジュールなどが安価に入手できるようになった。これらを活用して、新たな製品が生み出されることに期待が集まっているが、デジタルビデオを組み込み機器に搭載するのはそう簡単なことではない。本稿では、技術面で考慮すべき点やビデオ機能がもたらす利点をまとめ、組み込み機器の新たな可能性を探る。

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フォーマット変換

 今日の多種多様なモバイル機器に対応するには70種類ものビデオフォーマットをサポートする必要がある。そのため、コンテンツプロバイタはその多様なビデオ形式間の変換を行うトランスコーダに目を向けている。トランスコーディングとは、異なるコーデック方式を採用するターゲット機器に合わせて、別の形式へとデジタルからデジタルへの直接変換を行うことである。その際には、まず元のデータを中間形式のデータに圧縮し、それをターゲットとする形式に再符号化する。

 米Texas Instruments社は、メディアゲートウエイやマルチポイント制御ユニット、セットトップボックスなどにおけるビデオトランスコーディング向けに、新たなデジタルメディアプロセッサを提供している。DSPベースのプロセッサSoC(system on chip)である「TMS320DM6467 DaVinci」は、リアルタイムでのマルチフォーマットのビデオトランスコーディングを実現する。プロセッサコア「ARM926」と600MHzのDSPコア「C64x」を、ビデオコプロセッサ、変換エンジン、目的に適したビデオポートインターフェースとともに搭載している。その性能は、前世代品と比べて10倍向上しているという。価格は35.95米ドル(量産価格)である。

ビデオキャプチャカード

図3 高速ビデオキャプチャカード「PCIe-RTV24」
図3 高速ビデオキャプチャカード「PCIe-RTV24」 30フレーム/秒のフレームレートでリアルタイムでの画像キャプチャが行える。4チャンネルをサポートする。

 マシンビジョン、セキュリティ、ビデオ監視の分野では、位置認識、バイオメトリクスによる顔認識、車両のナンバープレート認識などのために広い帯域幅を必要とする。この分野で用いられる機器は、コンテンツプロバイダがアナログキャプチャカードやフレームグラバーを用いて取得した信号源から直接得たデータを用いて処理を開始する。

 米Adlink Technology社は、こうした分野をターゲットとした製品として「PCIe-RTV24」を発表している(図3)。同製品は、PCI Expressに対応した高速ビデオキャプチャカードであり、最大30フレーム/秒のフレームレートでのリアルタイム画像キャプチャ機能に対応し、4チャンネルをサポートする。標準のコンポジットカラー形式またはモノクロビデオ形式を入力とし、プログラマブルな解像度を持ち、ほぼすべての一般的なデジタル形式のビットマップ生成に対応する。例えば、1ピクセル当たり24ビットのRGB形式であるRGB24の場合、赤、緑、青のそれぞれに対応する8ビットを出力する。また、ウォッチドッグ機能と、ストロボ光制御、トリガー取得、アラーム信号に使用可能な4つのデジタルI/O信号も提供する。Microsoft WindowsとLinuxに対応し、価格は195米ドルである。

ユーザーインターフェースの分離

 ビデオ機能は、組み込み機器に多くの利点をもたらす。しかし、これを適用するために必要となる開発コスト、ディスプレイや信号処理回路の製造コストなどは、一部の組み込み機器にとっては高価になりすぎる可能性がある。そうした機器においては、ユーザーインターフェースの部分を分離することで、比較的安価にデジタルビデオの利点を享受することができる。そのユーザーインターフェースは、パソコン、PDA端末、携帯電話機などの汎用機器であってもよい。Bluetooth、IEEE 802.11、赤外線などの短距離通信リンク、あるいはハードワイヤードの接続を利用すれば、開発も容易になり、最小限のハードウエアコストで、グラフィカルなユーザーインターフェースを実現することが可能になる。

 組み込み機器にインターネットへの接続機能を内蔵すれば、世界中のウェブブラウザからアクセス可能なリモート(遠隔)対応のユーザーインターフェースを実現することもできる。

進化する組み込み機器

 現在、デジタルビデオは多くの民生電子機器やデスクトップ型パソコンに当たり前のように搭載されている。組み込み機器のシステム設計者には、それらと同じような使い勝手を実現することが求められている。ビデオによる説明やリアルタイムでのユーザーとのやり取りなどが可能になれば、新たなシステムがリリースされるたびに必要となる説明書の量は間違いなく削減されるだろう。

 デジタルビデオへの対応は、まず、携帯電話機やビデオプレーヤなどで使われている低コストの技術を採用した携帯型の組み込み製品などで進むと見られる。市販のハードウエアやソフトウエアが数多く出回るようになれば、組み込みシステム設計者は高度なビデオインターフェースをあらゆるシステムに搭載するためのツールを手に入れることが可能になる。今後、圧縮アルゴリズムのさらなる改善と半導体チップの汎用化が進むことで、製品コストを抑えつつ、複雑なマルチメディア機能を搭載した新製品を作り出すことが容易になるだろう。

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