高輝度LEDシステムの色精度を高める:設計の“肝”はカラーセンサー(1/3 ページ)
高輝度LEDを利用した照明システムの設計では、輝度や色のばらつきに悩まされることがある。そのような場合には、カラーセンサーを用いたフィードバック系を構築することで問題を解決できる。本稿では、色精度の要求される照明システムにおける色の作り方やカラーセンサー利用時の注意点などについて解説する。
ばらつきの問題
高輝度LED(high brightness LED)の登場は、照明分野における大革命だと言われている。すでに、建築物の照明、劇場の舞台照明、自動車の照明などの分野でその利用は進んでいる。さらには、液晶テレビのバックライトなどの市場にも革命をもたらしつつある。
しかし、高輝度LEDを利用した照明システムの設計には、さまざまな課題があることも事実だ。まず、高輝度LEDでは実際の色や光束に個体差があり、結果として、個々の照明器具ごとに色のばらつきが生じることがある。また、温度が上昇するに連れて光束の減少や色ずれが生じるなど、動作条件によって出力がばらつくこともある。こうしたばらつきに加えて、多くの器具では3色以上のLEDの色を混ぜることによって必要な色を作り出していることを考えると、すべての照明器具で動作条件を問わずに一定の色出力を得るのがいかに困難なことであるかは、容易に想像がつくだろう。
こうした問題は、システムにカラーセンサーを利用したフィードバックループを設けることで軽減できる。すなわち、正確かつ確実な色出力を実現することが可能になる。ただし、そのようなフィードバックループをいざ実装するとなると、制御メカニズムはもちろんのこと、センサーの選択、校正、各種部品の配置などの面でさまざまな問題が浮上する。
とはいえ、こうした問題も、適切な技術を利用することで解決できる。その結果として、正確な色を確実に出力する照明システムを実現することが可能になる。高輝度LEDシステムの設計にカラーセンサーを利用したフィードバック系を取り入れるには、コストの増加などの問題が伴う。しかし、そのコストに見合うだけの色精度と堅牢性の向上が図れるはずだ。
なぜ正確な色が必要なのか
すべての照明器具が正確な色を必要としているわけではない。例えば、信号機の場合、赤、緑(青)、黄の3色を認識できれば十分だ。実際、LEDを使用した信号機を注意深く観察すると、同じ青でも、個体によって若干ばらつきがあることがわかる。また、1つの信号機に使用されている数百個もの緑色LEDの間にもばらつきがある。しかし、ある程度離れたところから見れば、どのドライバーの目にも緑色の信号だということは認識できる。
これと同様に要件が緩い例として、ユーザーが赤、緑、青のレベルを調整して望みの色を得るRGB混色型の家庭用照明器具(アクセント照明器具)が挙げられる。この場合、目的の出力が得られるまでユーザー自身が色を調整することになる。ほかの器具と並べて比較でもしない限り、おそらく温度による色ずれや光束のずれにユーザーが気付くことはない。また、家庭用であれば、周囲温度も比較的安定しているだろう。
その一方で、色の精度が非常に重要なアプリケーションも存在する。具体的には、劇場の舞台照明デザイナが、3つのLEDフラッドライト*1)を使用してオレンジ色の照明が施された壁を演出する場合などである。仮に、いずれかのLEDフラッドライトがほかの2つよりも赤みがかったオレンジ色だったとしよう。その場合、残り2つのフラッドライトとの比較が可能であることを考えると、観客の目にもその違いがわかってしまう可能性がある。
別の例としては、自動車メーカーが次期高級モデルの内装照明を開発するといったケースが考えられる。仮に、計器類、ボタン、液晶ベースのナビゲーションディスプレイのバックライトの色として「クールホワイト」を選んだとする。しかし、これらの部品はそれぞれ別のメーカーに発注して調達する場合がほとんどであり、クールホワイトとはいっても、メーカーによって、ニュートラルホワイト寄りであったり、色温度の低い白色であったりといった違いがあっても不思議ではない。そうすると、それぞれに微妙に色の異なる部品が混在することになり、内装の印象が雑然としたものになってしまう。こうしたことを防ぐために、自動車メーカーは、発注先に厳格な色精度の要件を提示するはずである。
脚注
※1…(編集部注)大きな物体に均一な光を当てる照明装置。舞台や競技場などで使われる。
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