民生向けICの「信頼性」を確保せよ:決め手は設計/製造/品質部門の密な連携(1/4 ページ)
民生電子機器の分野では、消費者は最新の製品に飛びつく傾向がある。ただし、すぐに故障してしまうようなものは誰も望んではいない。従って、その部品を供給するICメーカーは、信頼性が高く、寿命の長い製品を提供する必要がある。プロセスの微細化が進み、信頼性を損ねる新たな要因が噴出する中、IC業界はこの問題にどのように取り組んでいるのだろうか。
「新製品」に弱い一般消費者
米Microsoft社の「Xbox 360(以下、Xbox)」やソニーの「プレイステーション 3(以下、PS3)」を購入した際、冷却ファンも一緒に購入するよう店員に勧められた経験を持つ人も多いだろう。仮に、その冷却ファンがそもそも製品に存在してはならない設計上の欠点を補うためのものだとしても、しぶしぶ数万円ほどを支払って購入した人もいるはずだ。また、Xboxを早い時期に購入した人は、Microsoft社からのリコール通知を受け取ったはずである。当初、Xboxは、システムの速度低下といった問題や、故障につながる恐れのあるICの存在、ICの冷却システムの不具合といった問題を抱えていたからだ。人によっては、「Xboxには設計上の欠陥があるらしい」といった情報や、リコールの事実をすでに知っていながら、購入に踏み切ったケースもあるだろう。
新たな技術/部品などをふんだんに盛り込んだ新製品の場合、発売されたばかりの時点では、通常よりも欠陥を抱えている可能性が高い。そのことを知りながらも、消費者は目新しい製品を購入する。このことは、民生電子機器業界に特有の非常に興味深い現象だと言えるだろう。この市場では、「最新/最先端のデジタル機器を手に入れたい」という欲求が冷静な判断に勝るケースがあるのだ。言い換えれば、民生機器を購入する動機は、かなり感情的なものであることが多い。多くの人が、ゲーム機を4年ごとに、しかも発売と同時に購入する。携帯電話機やMP3プレーヤは毎年のように、テレビやパソコンは4〜6年ごとに買い換えられている。
品質問題は企業にとっては命取り
多くの消費者が、リスクを把握し、しかも大金を払ってでも目新しい製品を手に入れたいと思っていることは事実である。しかし、例えば買ったばかりの携帯電話機の故障に何度も遭遇した人がいたとして、その人は、「それでも、とにかく最新機種を持っていたい」と思い続けるだろうか。中にはそういう人もいるのだろうが、たとえ消費者が気にしないとしても、民生機器のメーカーはその事実を無視できるわけがない。製品に重大な欠陥があれば、遅かれ早かれリコールが発生する。それには多大な費用がかかり、また消費者やOEM(original equipment manufacturer)企業から「欠陥ブランド」というレッテルを貼られる恐れがあるからだ。
家庭用ゲーム機の分野では、消費者の選択肢は実質的にはXbox、PS3、任天堂の「Wii」の3つだけだとも言える。しかし、テレビや携帯電話機など、ほとんどの民生電子機器では、消費者やOEM企業にとって多くの選択肢があり、一度与えた悪いブランドイメージがいつまでも影響を及ぼすことになりかねない。
現在、最新の民生機器を支えるICベンダーは、主に以下のようなことに重点を置いてIC製品の開発を行っている。
- そのICの十分な製造歩留りを確保すること
- そのICが機能テストに合格して機器に採用されること
- その機器が競合他社製品よりも早く店頭に並ぶよう、ICの開発期間を短縮すること
しかし、ここで改めて考えなければならないことがある。ICの製造プロセスがさらに複雑になり、性能や機能に対する消費者の要求が高まるに連れ、ICの故障による問題はますます増えていくことになるはずである。従って、以下の項目も重点の1つにおかなければならないのだ。
- そのICの信頼性を確保すること
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.