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スプリットターミネーションSignal Integrity

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 前回と前々回、図1(a)に示す終端回路の設計について検討した。この終端回路では、信号伝送ラインは単一の抵抗RT(終端抵抗)で終端され、固定電圧VT(終端電圧)に至る。多くの場合、終端抵抗の値は伝送ラインの特性インピーダンスと等しい値か、ドライバの駆動能力が十分でなければやや高めの値に設定される。終端電圧の理想的な値は、デジタル波形のハイ/ローの中心値である。言い換えれば、デジタル信号がハイ/ローにスイッチングするために必要なハイレベルの定格値VOHとローレベルの定格値VOLのそれぞれに対し、等しい余裕(マージン)を持つような終端電圧値であることが理想だ。この理想的な終端電圧は次式で表される。

 すなわち、ハイレベルの定格値とローレベルの定格値の平均値から、信号源であるドライバの駆動能力の非対称性に対する補正項を減算した値である。この式において電流の極性は、ソース(供給)電流IOHを正、シンク(吸い込み)電流IOLを負としている。従って、これらの電流の絶対値が同じであれば、加算値(補正項)は0になる。

図1 単一抵抗による終端と、2個の抵抗による終端(スプリットターミネーション)
図1 単一抵抗による終端と、2個の抵抗による終端(スプリットターミネーション) 抵抗R1が、(c)に示す式の終端インピーダンス条件、および(d)に示す駆動電流条件の両方を満足する場合、(a)と(b)の終端回路は同等に機能する。

 終端用として適切な電圧値の電圧源が利用可能であれば、図1(a)に示す構成は図1(b)の構成(スプリットターミネーション)に比較して理解しやすく、また必要な部品数も少なくて済む。一方、適切な終端電圧源が利用できない場合には選択肢に幅はない。つまり、図1(b)に示すように、テブナンの定理を基に等価電圧源を構成することになる。

 ここで、終端抵抗、終端電圧、電源電圧(VCC)が任意に与えられているとする。ただし、VCCは終端電圧よりも高い値である。この場合、図1(b)の抵抗R1、R2を次式から求めた値にすれば、伝送ラインから見える回路動作は図1(a)の回路動作と同様になる。

 上式に従ってきちんと計算すれば、スプリットターミネーションの設計の大半は完了したと言える。次なる問題は、得られた計算値がどのような値かにかかわらず、その値に正確に一致する部品が入手不可能なものであるか否かということである。それぞれの部品には許容誤差があるし、標準抵抗の値はとびとびになっているからだ。

 終端抵抗の値に一定の誤差があると仮定し、電源電圧にある程度の変動を許容しても回路を正常に動作させるためには、図1(c)(d)に示す式によって最悪の条件について検討する必要がある。このような条件を抵抗R1が満足するならば、図1(b)の回路は図1(a)の回路と同様に動作する。ただし、最小値や最大値を考える場合には、温度の変動や経時変化などの影響も考慮に入れなければならない。いずれにしても、適切な数値は求めるには、条件に応じた十分な検討が必要である。言い換えれば、どんな場合にでも無条件に使えるような設計法は存在しない。

 図1(c)、(d)に示した条件が満足できない場合には、終端抵抗の目標値を高くして再検討するとよい。終端条件の精度が同等に保たれるわけではないが、終端抵抗の値を高くすれば、回路定数に対するマージンが大きくなる。また、R1とR2に対する許容精度にはある程度の融通が利く。つまり、R2を高精度に設定すればR1の許容範囲が広がり、その逆も成り立つ。

 抵抗値の選定に関しては、これ以上に深くは立ち入りできない。アナログ回路の部品選定では、精度要件のすべてを満足させるために常に最後の最後まで検討を要するからである。

 本稿のまとめとして筆者が指摘したいことは、図1(a)の回路をよく分析し、図1(b)の2個の抵抗が必要な理由と、それらの抵抗がドライバのインピーダンスおよび電流駆動能力に依存する制限条件を満足するためにどのように作用するのかを理解しなければならないということだ。

<筆者紹介>

Howard Johnson

Howard Johnson氏はSignal Consultingの学術博士。Oxford大学などで、デジタルエンジニアを対象にしたテクニカルワークショップを頻繁に開催している。ご意見は次のアドレスまで。www.sigcon.comまたはhowie03@sigcon.com。


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