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車載リチウムイオン電池で、電機/自動車業界間の提携が加速(2/2 ページ)

充電可能なプラグインハイブリッド車と電気自動車に関する話題が業界を席巻する一方で、その中核デバイスとなるリチウムイオン二次電池について、自動車メーカー/Tier1サプライヤと電機メーカーとの間で開発提携や合弁会社設立などの動きが急加速している。

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海外大手Tier1サプライヤの動向

 ドイツの大手Tier1サプライヤ、Continental社とRobert Bosch社も、2008年に入ってから積極的な動きを見せている。

 Continental社は2008年3月、ドイツDaimler社のディーゼルハイブリッド車「メルセデス・ベンツ S400 ブルーハイブリッド」向けに、2008年末からリチウムイオン電池の初期量産を開始することを発表した。また、今後の需要拡大を見据えて、2〜3年内にハイブリッド車や電気自動車向けリチウムイオン電池の生産ラインを追加立ち上げする方針。Continental社は、GM社とのリチウムイオン電池の共同開発プログラムにも参加している。さらに、2008年6月に国内リチウムイオン電池ベンチャのエナックスに16%出資したことを発表しており、技術開発を加速する姿勢を鮮明にしている。

 一方、Bosch社は2008年6月、モバイル電子機器用で高いシェアを持つ韓国SamsungSDI社と車載リチウムイオン電池事業で提携することを発表した。双方50%出資の合弁企業SB LiMotive社を韓国に設立し、2008年9月から活動を開始する。事業計画は明らかにされていないが、2010年から量産を開始するという報道もある。Bosch社とSamsungSDI社の地盤であるドイツの大手自動車メーカーや韓国Hyundai社などが、顧客ターゲットになると見られる。

 米Johnson Controls社とフランスSaft社は2006年、車載リチウムイオン電池の合弁会社として米国にJohnson Controls-Saft Advanced Power Solutions(JCS)社を設立した。JCS社は、2008年1月からフランスで量産を開始しており、PSA社やドイツDaimler社のハイブリッド車などで採用される見通しだ。

三洋電機も正式参入

 三洋電機は2008年5月、これまで車載ニッケル水素電池を供給して来たドイツVolkswagen(VW)グループと、ハイブリッド車用リチウムイオン電池の共同開発で合意した。2009年3月までに国内に量産ラインを完成させ、2009年末からは年間で自動車1万5000〜2万台に相当する電池セルを生産する予定。さらに、プラグイン・ハイブリッド車用も2011年までに開発し、2015年に生産能力を月産1000万セルに拡大する。2020年には世界シェア40%を目指すという、強気の事業計画である。三洋電機は、ニッケル水素電池を本田技研工業や米Ford Motor社に供給しており、リチウムイオン電池についても共同開発を含めた供給契約を結ぶ可能性は高い。

 東芝は2007年12月に、5分間で容量の90%以上を充電でき、10年以上の長寿命と安全性を向上した新型リチウムイオン電池「SCiB」を発表している。この時は、風力発電や非常用電源などの産業用製品として発表していたが、2008年5月の「人とくるまのテクノロジー展2008」では、すでに採用実績のあるインバータ、モーターだけでなく、電池として車載用に最適化したSCiBも提供できるという展示を行った。現在は、ハイブリッド車用を先行して開発しているという。

安全性の問題はクリア

図2 車載リチウムイオン電池における出力密度とエネルギー密度の関係(提供:AESC)
図2 車載リチウムイオン電池における出力密度とエネルギー密度の関係(提供:AESC) ハイブリッド車では出力密度、電気自動車ではエネルギー密度が重要になる。プラグインハイブリッドはその中間に位置する。

 二次電池の性能指標は、放電時の電力の高さを示す「出力密度」と、一定の重量/体積の中に電力をどこまで蓄えられるかを示す「エネルギー密度」で語られることが多い。車載用途の場合には、電動駆動の航続距離よりもパワーを重視するハイブリッド車では出力密度に、パワーよりも航続距離性能が求められる電気自動車ではエネルギー密度に重点を置いた製品開発を行う。プラグインハイブリッド車はその中間に位置する(図2)。

 これまで、車載用途でのリチウムイオン電池採用をためらわせてきたのが、2006年〜2007年にパソコンなどで起きた発火事故など、安全性に関する問題である。しかし、すでに各社とも安全性は確保できたとしており、残る大きな課題は価格だけになる。価格を下げるには、何より生産規模を増やすことが必要であり、顧客確保に向けての事業提携や共同開発は今後も加速する模様だ。

(朴 尚洙)

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