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オシロのプローブの曲がりを直すSignal Integrity

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 高速オシロスコープ用のプローブには、信号の計測時にプリント配線板上の任意のパターンに正確にタッチできるよう、針のように先が細く鋭く尖った「チップ(tip)」が付いているものがある。このチップは、信号をきちんと捕捉するための重要な役割を果たす。チップ端が鋭いほど、より小さい押圧によって、銅配線のパターンやはんだの表面を覆う酸化膜を貫通することができる。

 筆者は、この種のプローブを少し前に調達した。ところが、使い始めてからすぐに、そのプローブの具合が徐々に悪くなってきていることに気付いた。信号を安定して取得するのに必要な力(圧力)がだんだん大きくなってきたのだ。最後には、プローブに重しを載せたり、プローブ先端をテープで固定したりすることが必要になった。

写真1 チップを修理している様子
写真1 チップを修理している様子   

 筆者は、その原因はプローブ先端のチップが丸まってきたことだと考えた。そこで、確認のためにチップの部分を顕微鏡で観測してみた。すると、チップの先端は丸まっているのではなく、ひどく折れ曲がっていた。折れ曲がってしまったので、パターン面に接触するのがチップの先端ではなく側面になっていたのである。

 それ以降、筆者はプローブの先端を頻繁にチェックするようにした。具体的には、10倍から20倍の拡大鏡を使用して先端を注意深く観察するようにした。そして、先端が曲がりそうな徴候が見つかったなら、すぐに修理するのである。その修理には、2つの道具を使用した。小型の鉄敷(かなしき。被加工物を載せて作業する鋼鉄製の台)とマイナスのドライバ(ねじ回し)である(写真1)。

 鉄敷としては、作業台で用いるのと似た形をしたボール盤用の万力を使用した。この種の万力は、ホームセンター、あるいは質屋やフリーマーケットなどに行けば手に入るだろう。ただし、表面は焼き入れした鋼であるものがよい。硬いプローブチップの曲げを直すのに使用するのだから、それ相応に硬い面を必要とするのである。

 当然のことながら、ドライバも先端が焼き入れされた鋼で作られた高級品を使用する。よくある小型ドライバなどでは柔らか過ぎるので、機械作業者向けのものを入手したい。筆者の場合、幅が約3mm(0.125インチ)のドライバを使用した。

 プローブ先端のチップの曲がりを直すには、まずチップを鉄敷に置き、ドライバの先端で軽くこする。この作業は、注意深く、慎重に行わなければならない。プローブを少しずつ回して、すべての向きからこする必要がある。その際、チップを壊してしまうことがないように少しずつ作業を進めることが肝要である。数回こすれば、チップの曲がりはかなり改善されるはずだ。さらに、注意深く作業を進めることで、新品同様にできるだろう。

 この一連の出来事を通して、筆者はプローブとその先端にあるチップがどのようなものなのかを再認識させられた。そしてその後は、より慎重にプローブを使用するようにしている。配線パターンに接触させる前には、はんだマスク(保護膜)が完全に除去できているか否かを確認するとともに、露出した銅配線パターン面を、綿棒の先に貼り付けた600番のサンドペーパーで磨くようにしている。このような前処理を施すことにより、プローブのチップをさほど強く押し付けなくても信号を正しく観測できるようになる。

<筆者紹介>

Howard Johnson

Howard Johnson氏はSignal Consultingの学術博士。Oxford大学などで、デジタルエンジニアを対象にしたテクニカルワークショップを頻繁に開催している。ご意見は次のアドレスまで。www.sigcon.comまたはhowie03@sigcon.com。


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