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DC-DCコンバータのノイズ対策[理論編]徹底研究!ノイズの発生原因を理解する(3/5 ページ)

スイッチング方式のDC-DCコンバータは、その仕組みから、ノイズの発生源となってしまう可能性がある。これを避けるために、設計者は適切な対処法を知っておかなければならない。本企画では、2回にわたり非絶縁型/スイッチング方式のDC-DCコンバータのノイズ対策について実践的に説明する。今回は『理論編』として、ノイズの種類やノイズの発生メカニズムを中心に解説を行う。

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ノイズの発生メカニズム

 それでは、ノイズの発生メカニズムについて詳細に見ていこう。図4に示したのは、図3の等価回路の各部の波形である。また、図5は図4の赤い線で囲った部分を拡大したものであり*3)図6は、図4のT2〜T7における様子を等価回路として表したものだ。

 高周波ノイズが発生するのは、Q2がターンオフするときとQ1がターンオフするときなので、以下では、この部分について詳細に説明する。


■Q2がターンオフするとき

図4 等価回路各部の波形
図4 等価回路各部の波形 

 図4のオレンジ色の網掛け部分がQ2がターンオフしたときの様子である。半導体スイッチ(パワーMOSFET)のノイズは、基本的にはオフする瞬間にエネルギーが解放されることで生じるものだ。ここでは、フリーホイールダイオード(Q2のボディダイオード)のターンオフ時のノイズという言い方をしているが、タイミングとしてはQ1がオンになるときでもあるので、Q1のターンオン時のノイズという言い方をする場合もある。


図5 リカバリの瞬間の詳細電流波形
図5 リカバリの瞬間の詳細電流波形 

 Q1がオンになると、入力からQ1を通して電流が流れ始め、その電流が最初はQ2の環流電流をキャンセルするようにしてQ2に流れ込む(図6(a))。Q2の電流がゼロになっても、Q2のボディダイオードが備えるリカバリ特性によって、蓄積されたキャリアがなくなるまで、逆方向(カソードからアノードの方向)に電流が流れる(図5)。この電流がいわゆるダイオードのリカバリ電流である。このリカバリ電流はCin、Q1、Q2で構成されるループに流れる短絡電流なので、ループ内のすべての寄生インダクタンスに電流のエネルギーが蓄積される。このエネルギーは1/2×LpIPR2という式で表される。ここで、Lpは寄生インダクタの総計値、IPRはリカバリ電流の値である。

 このエネルギーは、リカバリが働かなくなった瞬間に解放される。このとき共振が起きるので、結果としてスイッチノードに高周波のリンギング電圧が観測される(図6(b))。共振の相手となるキャパシタは、Q2のドレイン‐ソース間容量Cp2である。このとき、Q1はオンしているので、Q1のドレイン‐ソース間容量は影響しない。

 リンギング電圧の周波数は、ダイオードの両端の容量と入力側のループのすべての寄生インダクタンスによって決まる共振周波数となる(以下参照)。

 ここでLp=Lp1+Lp2+Lp3+Lp4である(Lp1〜Lp4は寄生インダクタ)。

 なお、本来、リカバリが働かなくなった瞬間の共振は、スイッチングループの寄生要素だけでなく、LC(インダクタLと出力コンデンサC)フィルタの寄生要素も含めて起きるのだが、ここでは話を簡略化するために、前述したとおり、この部分の寄生要素は無視して考えている。Lの寄生容量が数pF程度であるなら、このように考えても差し支えない。

■Q1がターンオフするとき

図6 各タイミングにおける等価回路
図6 各タイミングにおける等価回路

 続いて、Q1がターンオフするときのスパイク/リンギングノイズについて考える(図4の青い網掛け部分)。このとき生じるノイズのエネルギーは、Q1がオフする直前にQ1(整流用MOSFET)に流れるスイッチング電流が、Lp1とLp2に蓄積したエネルギーである(図6(c))。これは、1/2×(Lp1+Lp2)IPK2で表される。ここで、IPKはQ1がオフする瞬間のピーク電流であり、インダクタの出力電流センター値をIo、リップル電流をΔILとすると、IPK=Io+ΔIL/2で表される。

 Q1がオフした瞬間に生じるリンギング電圧(図6(d))の周波数は、以下の式で表される。

 すなわち、リンギング周波数はQ1のドレイン‐ソース間容量Cp1と入力側のループのすべての寄生インダクタンスとの共振周波数となる。

ノイズの伝搬

図7 電圧、電流、磁束のイメージ
図7 電圧、電流、磁束のイメージ 

 ノイズの発生メカニズムがわかったところで、続いてはこれらのノイズがどのような形でどこに伝搬するのかを見ていこう。

 図7に示したのは、降圧コンバータの等価回路に発生する電圧波形、電流波形、磁束のイメージである。なお、電波暗室で実際に放射ノイズを測定すると、入力ラインから発生する電波も大きく影響しているので、この部分も図7には含めている。以下、図中の「高di/dt(時間当たりの電流変化が大きい)」、「高dv/dt(時間当たりの電圧変化が大きい)」の部分について詳しく説明する。

■高di/dt

 Q1、Q2のターンオフ時の数百MHzのスイッチングノイズは、高di/dtの電流サージとしてCin、Q1、Q2の高周波リンギングループを循環する。これによって、高di/dtの電流が以下のようにノイズを発生させていく。

(1)スイッチノードにLp2×di/dtで生じる高dv/dtのリンギング電圧VSWを発生させる

(2)Cinの両端にもLp4×di/dtで決まるスパイク電圧を発生させる

(3)Q1、Q2、Cinのループを流れる高周波のリンギング電流が、ループの面積に応じて磁束を発生し、それが外部へ向かって放射される。遠方界ではこれが電磁波として現われ、機器の基板のストリップラインやループにおいて電磁誘導を引き起こす

■高dv/dt

 前項の「高di/dt」の(1)で示したように、スイッチノードには、高di/dtの電流によって高dv/dtの高周波リンギング電圧が発生する。このノイズは、インダクタの寄生容量を介して出力にリップルとして現れる。


脚注

※1…『スイッチングコンバータの基礎』(著者:原田耕介、二宮保、顧文建、発行:コロナ社)

※2…K. Harada, T. Ninomiya, M. Kohno, "Optimum Design of RC snubbers for Switching Regulators", IEEE Transactions of Aerospace and Electronics Systems, Vol.AES-15, No.2, March 1979

※3…M. Nakahara, T. Ninomiya, K. Harada ;"Surge and Noise Generation in a Forward DC-to-DC Converter," IEEE Trans. on AES, Vol. AES-21, No.5, pp.619-630, Sept. 1985.

※4…『オンボード電源の設計と活用』(著者:鈴木正太郎、発行:CQ出版)


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