本稿では、車載用途で利用可能な電源回路を紹介する。図1の回路は、12Vの電圧を受け取り、5Vの電圧を生成する。この電源回路はごく少数の部品で構成されているが、大型化しがちな過電圧制限回路を付加することなく、高い過渡電圧に対応することができる。具体的には、車載電子機器に対するEMC(電磁環境適合性)規格であるISO(International Organization for Standardization) 7637-1(「Road vehicles -- Electrical disturbances from conduction and coupling -- Part 1: Definitions and general considerations」)の過渡電圧条件を満足することが可能だ。
図1の回路において、通常動作時には、抵抗R3の一端の電位が、導通状態のマイクロコントローラのポート(トランジスタQ4)を介してグラウンドレベルとなる。一方、スタンバイモードになると、このR3の一端とグラウンドとの間がオープンの状態になる。それにより、この電源回路の静止電流は2.8mAから160μAにまで減少し、出力電圧は約3.5Vに低下する。スタンバイモードが不要な用途では、R3を削除し、抵抗R5の値を220Ωとする。ツェナーダイオードD1の「BZX84B4V7」には、72Vまでの高耐圧製品があるが、このケースではR5の値を120Ωとし、D1としては4.3Vタイプの製品を使用すればよい。また、24V系の入力電圧を使うシステムでは、ツェナーダイオードD2として36Vタイプの製品を使用する。
過渡的な高電圧に対する動作は次のようになる。入力電圧が上昇すると、D1およびトランジスタQ3のベースに流れる電流が増大する。それに応じてトランジスタQ2を流れる電流が増加し、結果としてQ1のゲート‐ソース間電位が低下する。入力電圧が19Vを超えるとD2が導通し始め、Q2の動作を受けてQ1がオフになる。このような動作により、200Vを超えるような高電圧が常時入力されても、この電源回路はダメージを受けない。なお、Q1のミラー容量はQ1を高速積分器として働かせ、電源回路の安定動作が維持される。
図中のD2はオプションであり、取り除くことが可能である。ただし、その場合、Q3としては「MMBTA42」のような高耐圧品を使用する。D2を使用しない場合には、過大な電圧が常時印加されるとQ1が過熱することになる。しかし、ISO 7637-1で規定されているすべてのインパルス入力に対してであれば、D2がなくても問題はない。
また、この電源回路には、D1およびQ3を経由して電流を引き込むことができるという利点もある。この特徴から、マイクロプロセッサの入力端子の保護回路として、図示のような2個のダイオードの使用が可能になる。
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