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“電子の眼”として働く光センサーBaker's Best

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 エレクトロニクスの分野では、かなり早い時期からシリコンベースの光センサーを回路に組み込んで活用してきた。シリコンベースの光センサーの内部では、光を照射することによって電荷が発生し、電流が流れる。こうした光センサーは、血液の検査、腫瘍の非接触検診、煙の感知、位置の検出、組成の分析(クロマトグラフィ)などの用途で“電子の眼”として使用されている。このようなシステムを設計する場合、もちろんシリコンセンサーの基本を理解しておくことが重要だ。それに加え、センサーからの微弱な電流(信号)をいかにして有用な電気的情報として取り出すかが、十分な検討を要する課題となる。最近では、光センサーの用途における要求精度が厳しくなってきており、それに連れて設計も難しくなってきた。

図1 光センサー用のトランスインピーダンスアンプ
図1 光センサー用のトランスインピーダンスアンプ 回路設計時に考慮すべき主要な要素を簡略化して示した。

 微弱な電流を信号に変換するという課題に対しては、トランスインピーダンスアンプが利用されてきた。この種のアンプ回路は、ディスクリート部品を組み合わせて実現する場合、図1のように構成することになる。この回路には、後述する寄生要素を記載しているので多少わかりにくいが、要点は次のようになる。

 まず、フォトダイオード(すなわち、シリコンベースの光センサー)を、オペアンプの反転入力端子とグラウンドの間に接続する。また、100kΩから10MΩ程度の高抵抗をオペアンプの反転入力端子と出力端子の間のフィードバック経路に挿入する。非反転入力端子の接続先はグラウンドである。フォトダイオードに光が入射すると電荷が発生し、この電荷は高抵抗を経由してフィードバックループを流れることになる。すなわち、フォトダイオードからの電流は、フィードバック経路の高抵抗によって電気信号にリアルタイムに変換されるのである。

 図1の回路図は実際の回路をモデル化したものだが、この図からも設計上の注意点を見て取ることができる。その要点は以下のとおりである。まず、オペアンプにおいては、入力バイアス電流が数pA程度に少なく、入力容量が小さいことが要求される。この条件に合致するオペアンプとしては、FET入力またはCMOS入力のものが適している。また、当然のことながら、ノイズが少なく、オフセット電圧が数μV程度のものが望ましい。さらに、トランスインピーダンスアンプ全体の設計においては、安定性、帯域幅、ノイズ性能などの面で、回路のレイアウトなどを含めて最適化を図らなければならない。こうした設計手法は直感的に示すのは難しい。フォトダイオード、オペアンプ、フィードバック経路に用いる回路素子、および図1に示すような各部品に付随する寄生素子(容量、インダクタンス、抵抗)について考慮しなければならないからだ。

 なお、トランスインピーダンスアンプから出力された信号は高次の低域通過フィルタによって平滑化して使用する。このフィルタ処理により、ノイズフロアから信号を分離することが可能になる。通常は、フィルタ回路の後段では、A-Dコンバータにより信号をデジタル化して利用する。

 初期の光センサー回路は、トランスインピーダンスアンプと低域通過フィルタを組み合わせた完全なアナログ回路として構成されていた。その後、トランスインピーダンスアンプの代わりに、スイッチング方式の積分器を使う方法が人気を得た。このスイッチング方式の積分器は、信号源、つまり光センサーにより近い位置にデジタル回路を配置するという動向の先駆けとなった。光センサーの用途が多様化するとともに、このような方式を推し進め、光センサーチップにA-Dコンバータを集積するようになった。

<筆者紹介>

Bonnie Baker

Bonnie Baker氏は「A Baker's Dozen: Real Analog Solutions for Digital Designers」の著書などがある。Baker氏へのご意見は、次のメールアドレスまで。bonnie@ti.com


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