高い精度が要求される光センサーでは、多くの場合、光センサーからの信号をデジタル値に変換して使用する。そうした光センサーシステムのフロントエンド部には、光センサーからの信号を増幅するプリアンプが用いられる。
通常、このフロントエンド回路は、図1に示すように光センサー(フォトダイオード)、オペアンプ、フィードバック抵抗などで構成する。この種の回路は、フォトダイオードからの電流信号を電圧出力に変換することからトランスインピーダンスアンプと呼ばれる。
同アンプはフォトダイオードやオペアンプの入力端子容量の影響により、動作が不安定になりやすい。そのため、回路の安定化を図ることが設計上の重要な課題になる。
一般に、回路の安定性は伝達関数によって評価される。図1の回路の伝達関数は次式で表すことができる。
ここで、AOL(jω)はオペアンプの開ループゲインの周波数特性、βは帰還率である。βは、ZINを入力インピーダンス、ZFをフィードバックインピーダンスとして次式で表される。
ここで、ZINはRPD‖jω(CPD+CCM+CDIFF)、ZFはRF‖jω(CRF+CF)と表すことができる(各パラメータの意味については図1を参照)。
βの逆数、すなわち1/βはノイズゲインとも呼ばれる。これは、オペアンプの非反転入力端子に対するノイズの閉ループゲインに相当する。
図2のボーデ線図は、開ループゲインAOLとノイズゲイン1/βをプロットしたものだ。1/βのプロットのfPは以下の式で表される。
一方、fZは次式で決まる。
このボーデ線図では、AOLのプロットと1/βのプロットがどこで交差しているのかが重要な意味を持つ。交差する個所での2つのプロットの傾きからシステムの位相余裕の大きさ、言い換えればシステムの安定性が評価できるのである。例えば、図2では2つのプロットが20dB/decadeの傾きで交差している。この場合、オペアンプ(AOL)の位相シフトが-90°(90°の遅れ)、フィードバック系(1/β)の位相シフトが0°となる。AOLの位相シフト量から1/βの位相シフト量を減算するとシステムの位相シフトになるので、このときのシステムの位相シフトは-90°となる。すなわち、位相余裕は90°である。従って、回路は安定に動作する。仮に、2つのプロットが40dB/decadeの傾きで交差している場合(例えば、1/βのプロットのfZとfPとの間でAOLが交差している場合)、位相シフトは-180°になり、位相余裕は0となる。この場合、回路は発振したり、ステップ信号の入力時にリンギングが生じたりする。
回路の安定性を高めるには、フィードバック経路中にコンデンサCFを挿入したり、周波数特性や入力容量の異なるオペアンプを使用したりする。例えば、fPが2つのプロットの交差する周波数の1/2の周波数になるようオペアンプの帯域幅や入力容量、あるいはフィードバック抵抗の値を選定すると安定な状態が得られる。この条件を実現するには、挿入するCFとして次式を満足する容量値を選べばよい(fGBWはオペアンプのゲイン帯域幅積)。
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