“残る課題はコストと効率” ――LED照明をもっと身近に:イベントレポート〜ライティング ジャパン 2009〜
2009年4月15日から17日の3日間、LEDや有機ELなどの照明技術が集う次世代照明技術展「ライティング ジャパン」が東京ビックサイトで開催された。第2回となる今年は、3日間の来場者数が計1万6395名(実数)と、多くの来場者が訪れた。本稿では、展示会1日目に行われた基調講演の中から、パナソニック電工 松蔭 邦彰氏の講演内容をお伝えする。
国内外の照明関連技術が集う展示会「ライティング ジャパン」が2009年4月15〜17日の3日間、東京ビックサイトで開催された。
今年1月に開催された国際照明総合展「ライティング・フェア」では、従来の蛍光灯や白熱電球をはるかに上回る数のLED・有機EL照明が展示されていたことから、“まるで次世代照明展のようだ”といわれたほど、現在、こうした新世代の照明技術に注目が集まっている。
展示会初日に行われた基調講演では、LED、有機EL、両照明の開発を手掛けるパナソニック電工の常務取締役 松蔭 邦彰氏が登壇し、昨今の照明事業の現状と、今後の展開について述べた。
以下、松蔭氏の講演内容をお伝えする。
LED照明の現状――残る課題はコストと効率。白熱電球の代替として期待
蛍光灯や白熱電球などの既存光源がいま以上の効率向上に伸び悩む中、1996年に登場した照明用の白色LEDは、めまぐるしい速さで性能(発光効率)が向上している。チップそのものの効率は実験レベルで100lm/Wとされ、理論的には今後、200lm/W以上も可能だという(注)
注:白熱電球の発光効率は約15lm/W、蛍光灯は約110lm/W。松蔭氏の発表資料(パナソニック電工の数値)より
松蔭氏によると、LED照明の残る課題は“効率”と“コスト”の2点。LEDは、照明器具に組み込む際に、電源の影響や温度上昇、さらには大量の電流を流すことによるロスが発生してしまう。よって、すべてが光として変換されず、例えば光源部単体の効率を100とした場合に、トータルで70〜50%程度まで光量が落ちてしまう。この効率悪化をいかに削減できるかが、照明器具メーカーの課題だ。
画像2 デザイン性を重視したパナソニック電工の住宅用照明器具「MODIFY(モディファイ)」 電球型蛍光ランプ「パルックボールプレミア蛍光灯」とLED照明を使用した装飾照明器具。パナソニック リビング ショウルーム 東京に展示されている
もう1つの課題であるコストについては、現在lm(ルーメン)当たりの単価が白熱電球で0.2円、蛍光灯で1円程度なのに対し、LEDは4〜10円と、やはり従来光源と比べ割高感が否めない。
「2012年ごろには、現在の蛍光灯並みになるという予測もあるが、効率とコスト、この両面が解決すれば、LED照明は一気に普及するだろう」と、松蔭氏。
LED照明は、“長寿命、省電力、コンパクト”といった特徴を生かし、1998年ごろからフットライトや常夜灯としての商品展開が開始された。その後、発光効率の向上で白熱電球レベルに達した後、2000年初頭から小型のスポットライトやダウンライトでの展開も始まった。現在では、白熱電球の代替照明として期待されており、また、施設向けのベースライトなど、主照明などへの展開も図られている。
矢野経済研究所が昨年末に発表したLED照明の市場規模予測によると、2008年の売上見込みは、世界の照明市場規模(約7兆円)の約0.6%に当たる約400億円。これが2013年には全体で4000億円、さらに2018年には7000億円と、照明市場規模が2008年と同じで考えた場合、照明全体の10%がLEDの売上という試算になる。
有機EL照明の現状――LEDに比べると実用化はまだ先だが、面光源照明として期待
有機EL照明は、“高出力、薄型、水銀レス”というこれまでの照明にない特徴を持ち合わせていることから、面光源器具としての活用が期待されている。
有機ELの用途はディスプレイ用と照明用の2つの分けられているが、ディスプレイ用途については、すでに実用化レベルに達してきている。照明用途としては、さらなる高出力化、高効率化を図ることが大きな課題だ。
松蔭氏は、「有機ELは生産技術の進歩に伴い、面光源としては価格面でLEDよりも優位になる可能性が非常に高い。いずれにしても、現時点で2〜5年はLEDの開発からは遅れているが、今後の開発のスピードによっては、一気に面光源としての活用が期待できる」と述べた。
また、LED照明との住み分けについては、「有機ELは面でやわらかく発光するため、カバーを付けなくてもそのまま発光し、その状態でやわらかい光が提供できる。そういった意味で、家庭やオフィスの主光源になっていくと考えている」とした。
次世代照明、今後の展開
松蔭氏は最後に、LEDパッケージから器具ユニットまで、トータルで照明事業を展開をしている同社が果たすべき役割について次の3点を挙げた。
- 省エネという観点で見た一般照明との置き換え、もしくは車載用への展開:新築はもちろん、既存器具のリニューアルでCO2を削減
- LEDユニットと器具本体の一体設計で放熱性を飛躍的に向上したパッケージや、よりコンパクトな商品の展開:小型・薄型を活かした新しい照らし方の模索
- 新しい光の使い方:情報通信(可視光通信)/農業/生体リズム改善への応用など
同社が持つソフト、ハードの両面を生かしたバリューチェーンの強化により、照明への満足度向上に努めていくという。
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