検索
特集

ルネサスの化合物半導体事業、パワーアンプ分野ではGaNデバイスを投入

PC用表示
Share
Tweet
LINE
Hatena

 ルネサス エレクトロニクスは2010年10月、同社の化合物半導体製品に関する事業強化策を発表した。光半導体製品やマイクロ波半導体製品についての方針を明らかにしたもの。(1)フォトカプラ、高周波スイッチICをはじめとする注力製品で世界シェア1位を獲得/維持、(2)GaN(窒化ガリウム)を利用した半導体製品を2010年度中に市場投入、の2つを骨子とする。

 ルネサスの推定によると、化合物半導体の世界市場の規模は2010年度で4130億円。その内訳は、光半導体製品については、光ストレージ分野(レーザーダイオードや受光IC)が640億円、フォトカプラが830億円、マイクロ波半導体については、GaAs(ガリウムヒ素)低雑音FETなどが120億円、高周波スイッチICが490億円、パワーアンプが2050億円となっている。同社は、これが2012年度までに年平均8%で成長し、4795億円に達すると見ている。そして同社が目標としているのは、市場の成長率である8%を上回る11%の成長を達成することだ。

 化合物半導体製品における現在のルネサスのポジション(同社の推定値)は、フォトカプラが16%のシェアで世界第2位、光ストレージ分野が同25%で第2位、高周波スイッチICが同23%で第1位、GaAs低雑音FETが同70%で第1位だという。

 これらのうち、まずフォトカプラについて、2011年度に世界シェア第1位を目指す。そのための施策として、ルネサスのアナログ&パワー事業本部 化合物デバイス事業部の事業部長を務める細野泰宏氏は、「フォトカプラについては、ハイブリッドカーや電気自動車、LED照明、太陽光/風力発電、電力メーターなど、省エネ意識の高まりによって成長が期待される市場向けに高温対応/低消費電力/小型パッケージの製品展開を加速する。また、高電圧/大電流出力の用途に適したIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)やマイコンを組み合わせたキット販売を推進し、売上の拡大を図る。特に、海外については、サポート要員を倍増することで拡販体制を強化する。さらに、このような拡販体制に対応できるよう、2012年度の生産能力を2009年度第4四半期比で2倍に増強する」と説明した。

 次に、高周波スイッチICについては、携帯電話機や無線通信機能を備える機器向けに、「従来比で25%の低損失性能を実現する製品を供給することにより、世界シェア第1位を維持する」(細野氏)という。抵抗値の低い配線の形成技術を適用することと、エピタキシャル層の構造を最適化することにより、低オン抵抗/低オフ容量の製品を実現するとしている。

 また、小型化/薄型化のニーズに応えるために、アイランドレスのTSON(Thin Surface Outline Non-lead)パッケージ(1.0mm×1.0mm×0.4mm)や、WL-BGA(Wafer Level Ball Grid Array)パッケージ(0.5mm×0.5mm×0.2mm)を順次開発する。

GaNデバイスを新規投入

 最後に、パワーアンプ分野については、GaNベースの半導体製品を2010年度中に市場投入することで攻勢をかける。まずはケーブルテレビ向け製品によって市場参入を果たし、その後、マイクロ波/ミリ波通信市場など、高周波/高出力のFET市場への展開を図る。ケーブルテレビ向けには、第1弾の製品として、GaNベースのFETや、コンデンサなどの電子部品を搭載したモジュールのサンプル出荷を2010年度中に開始する。

 「GaNデバイスは、SiC(炭化ケイ素)デバイスに比べて高周波特性に優れていることから、高耐圧/高速な製品を実現するものとして期待できる。特に、当社のGaNデバイスの生産技術は、シリコン基板上にGaNを積み重ねて回路を作り込む手法なので、SiC基板上にGaNを積み重ねて回路を作り込む他社の手法と比較して、基板の大口径化が容易だ。他社方式の場合、3〜4インチ(7.6〜10cm)の基板を用いるのに対し、当社の方式では6インチ(15cm)化が容易なので、低コストで製品化できることが強みになる」(細野氏)という。

(飴本 健)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る