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組み込み設計を変えるFPGA(3/3 ページ)

FPGAを初めて利用する際には、従来からの設計手法を大幅に変更する必要がある。これは設計者にとっては大きな負担であり、また、それなりのリスクを伴う決断になる。にもかかわらず、FPGA技術は組み込みシステムの設計者にとって貴重な武器となりつつある。その理由は何なのか。

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組み込みモジュール

 組み込みシステム分野の標準化団体は、FPGAのハードウエアに基づいた新しい設計仕様を策定している。例えば、最近承認されたVITA(VME Bus International Trade Association) 57.1 FMC(FPGA Mezzanine Card)規格は、組み込みシステム設計でのFPGAの利用を容易化する。同規格は、ベースボード上に実装されたFPGAに接続するメザニンカードのI/Oデバイスについて定義している。この場合、FPGAはこうしたデバイスを直接制御する。同規格が採用しているFMC方式は、I/O部分を変更するだけで、1つのFPGA設計を複数のプロジェクトで再利用することを可能にする。FMCモジュールは、標準のPMCモジュールの約半分のサイズである。

写真4 TechnologicSystems社の「TS-7370」
写真4 TechnologicSystems社の「TS-7370」 ユーザーによるプログラミングが可能なFPGAを搭載しており、ほとんどのカラーTFT液晶パネルに対するカスタムインターフェースを構築することができる。

 米Curtiss-Wright社に買収されたVMETRO社は、FMC規格に基づいたI/Oモジュールを提供している企業の1つである。同社のモジュール製品「ADC510」は、500MHz/12ビットのA-Dコンバータを2個搭載しており、レーダー、シグナルインテリジェンス、ECM(Electronic Countermeasures)などのデジタル信号処理アプリケーションをターゲットとしている。空気冷却または伝導冷却が利用でき、耐久性に優れた製品となっている。

 安価な市販の組み込みモジュールでも、設計者が柔軟にカスタムアプリケーションを構築できるようにすることを目的としてFPGA技術が採用されている。例えば、米Technologic Systems社の「TS-7370」は、PC/104のフォームファクタを採用した、液晶ディスプレイ対応のシングルボードコンピュータである(写真4)。同製品は、Cirrus Logic社の200MHz動作/ARM9ベースのプロセッサ「EP9302」と、ユーザーによるプログラミングが可能なLattice社製FPGA「XP2」を利用している。

 同社がこの製品を液晶ディスプレイ対応とうたっているのは、FPGAが専用RAMフレームバッファに接続されており、ユーザーがFPGA上にカスタムビデオコアを構成することで、ほとんどのカラーTFT(薄膜トランジスタ)液晶パネルへのインターフェースを提供することができるからである。複数の組み込みシステムアプリケーションをサポートするために、TS-7370は周辺インターフェースとして、オンボードRAM、10/100Mbps(メガビット/秒)のイーサーネット、USB 2.0ホスト、シリアルポート、SDカードソケット、A-Dコンバータ、デジタルI/O、温度センサー、リアルタイムクロックを備えている。TS-7370はLinux 2.6に対応しており、価格は149米ドル(100個購入時)である。


 予算の削減と、ますます複雑になるシステムに対処しなければならない設計者にとって、FPGAの採用は組み込み設計における重要な検討事項となった。FPGAは、1つのハードウエアで複数のシステム構成をとることができるという大きなメリットを持つ。また、従来のマイクロプロセッサベースのアーキテクチャでは性能要件を満たすことが困難な高速マルチチャンネルシステムにも適している。

 確かに、リカリングコストと消費電力が増大するために、利用できるアプリケーションが限定されることは、FPGAの欠点である。しかし、製造数が小/中規模のプロジェクトにおいては、リスクの軽減、設計期間の短縮、ノンリカリングコストの削減といった恩恵が得られるという意味で、最適な選択肢であると言える。

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