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3代目「プリウス」、ハイブリッドシステムのコストを2/3に削減(2/2 ページ)

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リダクションギヤでトルクを増幅

 トランスミッション部に配置される駆動用モーターについては、最高出力が従来比1.2倍の60kWに、最高回転数は従来比2倍以上となる1万3900回転/分になった。

 回転数が上がった一方で、モーターは30%程度薄くなっている(写真3)。モーターを薄くするとトルクも小さくなってしまうが、この問題についてはモーターのトルクを増幅する機械部品であるリダクションギヤを採用することで解決した。また、リダクションギヤを採用することにより、トランスミッション部の軸数が、2代目プリウスの4本から3本に削減されている。「モーターの小型/軽量化と軸数の削減により、トランスミッション部における大幅なコスト削減が可能になった」(トヨタ自動車)という。


写真33代目プリウスと2代目プリウスのモーター
写真3 3代目プリウスと2代目プリウスのモーター 右が3代目プリウス、左が2代目プリウスのモーターのカットモデルである。サイズの比較用に、カットモデルの上に10円玉を置いている。3代目プリウスでは、リダクションギヤを採用することによりモーターの薄型化に成功した。

 同社は、2005年3月に発売した「ハリアーハイブリッド」からリダクションギヤを採用しているが、これまでは主に高級車種におけるモーターの高出力化を最大の目的としていた。対して、3代目プリウスでは、リダクションギヤの採用がコスト削減面で大きな効果をもたらしている。 PCUは、2次電池ユニットから出力される200Vの直流電圧の昇圧について、従来は最大500Vだったところを650Vに引き上げた。これは、モーターの高出力化に対応するためである。直流電圧を交流電圧に変換するインバータについては、パワー素子の冷却方式を直冷式に変更した。これにより、PCUの小型/軽量化が可能になった。なお、重量については、「2代目プリウスと比べて、トランスミッション部で約20kg、PCUで約10kg」(トヨタ自動車)の軽量化に成功している。

 2次電池ユニットのニッケル水素電池は、2代目プリウスと同じものを使用しており、電池セル/電池モジュールの性能そのものは変わっていない。しかし、冷却系システムや電池モジュールの横に配置している2次電池用ECUを小型化することで、2次電池ユニットを小型化している。車両後部の荷室下部に設置される2次電池ユニットを小型化すれば、その分、荷室の容量を増やすことができる。3代目プリウスの荷室は、2代目プリウスと比べて容量が40l増加している。

 2次電池ユニットの電池容量は6.5Ah。満充電時には、モーターだけを使用する「EVモード」で2kmの走行が可能である。

メーターはVFDパネル2枚で構成

写真43代目プリウスのセンターメーター(提供:トヨタ自動車)
写真4 3代目プリウスのセンターメーター(提供:トヨタ自動車) 左側のVFDパネルは、運転状況を確認できる「エコドライブモニター」となっている
写真5タッチトレーサーディスプレイ(提供:トヨタ自動車)
写真5 タッチトレーサーディスプレイ(提供:トヨタ自動車) ステアリングに設置された操作スイッチについて、どの部分を操作しようとしているかをセンターメーターの右側に表示する。

 外形デザインでは、2代目プリウスと同じ「トライアングルシルエット」を継承しつつ、空力設計を見直した。空力抵抗係数を示すCD値を0.26から0.25に減らすことで、燃費の向上につなげている。具体的には、フロント/リヤバンパー、スポイラの形状を見直すことにより、「空気が車体からはく離しやすく、また空気の流れが車体に沿って巻き込まれていかない」(同社)ような設計となっている。

 メーターは、車両中央に配置するセンターメーターとした。このセンターメーターには、VFD(真空蛍光ディスプレイ)パネルを2枚使用している(写真4)。右側のVFDパネルは、速度やシフト位置など一般的なメーター表示の機能を持つ。左側のVFDパネルは、「エコドライブモニター」として環境に配慮した運転を支援するための表示を行う。例えば、アクセルやブレーキの踏み具合をインジケータで示す「ハイブリッドシステムインジケーター」や、モーター/エンジンのどちらの動力を使用しているかがわかる「エネルギーモニター」などである。

 また、新たに「タッチトレーサーディスプレイ」という機能を開発した(写真5)。これは、ステアリング上に設置されている、カーオーディオやエコドライブモニターの切り替え、空調などの操作を行うスイッチについて、どのスイッチを操作しているかをメーターに表示するものである。

 操作スイッチには、感圧スイッチとメカニカルスイッチが組み込まれている。スイッチを軽く押し込むと感圧スイッチが動作し、右側のVFDパネル上に、どのスイッチを操作しているのかが表示されるという仕組みである。これにより、メーターから目を離さずにさまざまな操作を行えるので、運転時の安全性を増すことができる。「スイッチ操作のセンシングに静電容量センサーを利用するという選択肢もあった。しかし、同センサーは感度が高すぎ、操作しようと思っていないときにも表示が行われてしまうことがある上に、寒冷地などで手袋を着けて運転するとセンシングできないため採用を見送った」(同社)という。この3代目プリウスのセンターメーターは、矢崎計器が供給している。

写真6太陽電池を設置したルーフ部(提供:トヨタ自動車)
写真6 太陽電池を設置したルーフ部(提供:トヨタ自動車) 京セラの多結晶シリコン型太陽電池セルを使用。パネル全体の平均出力は56Wである。

 ほかにも、オプション装備として先進的なシステムをそろえた。ロービームにLEDを採用した「LEDヘッドランプ」、ルーフ部に設置した太陽電池パネル(写真6)の電力で車室内の換気を行う「ソーラーベンチレーションシステム」、スマートキーを使って車外からエアコンの操作を行う「リモートエアコンシステム」などが選択できる。ソーラーベンチレーションシステムの太陽電池パネルは京セラ製で、その変換効率は16.5%である。

 また、トヨタ自動車は、装備を削減した2代目プリウスを新グレード「EX」として設定し、法人向けに販売する。価格は、本田技研工業のハイブリッド車「インサイト」と同じ189万円である。

(朴 尚洙)

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