オペアンプとは?
オペアンプは入力インピーダンスが高いため、出力インピーダンスの大きな信号源に接続しても、信号に影響を与えることなく微小な信号を増幅することができる素子です。また出力インピーダンスが低いことから、変動する負荷を駆動するためのバッファとしても使用されています。
初期のオペアンプは真空管で構成されており、サイズと電力消費量が大きく、ゲインやひずみ特性もあまり良好ではありませんでした。しかし、ベル研究所にて帰還アンプが考案されアンプの特性が画期的に改善された後は、さまざまな用途に使用されるようになりました。その後、トランジスタの発明によって真空管アンプは半導体アンプに置き換えられ、モジュールやハイブリッドのオペアンプが使用されました。1960年代の半ばにICオペアンプが登場すると、オペアンプは急速に広まり、現在も多様な用途で使用されています。
最初のICオペアンプはフェアチャイルドセミコンダクターの「μA702」ですが、入力インピーダンスやオープンループゲインが低く、電源電圧も+Vcc:+12V、−Vee:-6Vと汎用的ではありませんでした。その後、1965年に電源電圧:±15Vで動作し、入力インピーダンス:400kΩ(typ)、オープンループゲイン:45000V/Vと特性が改善された「μA709」の出現により、ICオペアンプが幅広い分野で使用されるようになりました。しかし、μA709は位相補償回路を外部で行う必要があったため、誰でも簡単に使用できる製品ではありませんでした。1968年に位相補償回路を内蔵した「μA741」が登場しましたが、この製品は出力短絡保護回路などの改善された特性により非常に使いやすいオペアンプとなり、現在も数社からセカンドソースが販売されています。
次に、アンプの仕組みについて解説します。アンプは2つの入力と1つの出力を持ち、その伝達関数はVout=AoL*Vin±Kで表されます。
AoLはアンプのオープンループゲインで通常、非常に大きく、10000以上の値となります。この大きなオープンループゲインにより、アンプは外部帰還回路を使用することでゲインを正確に設定できます。アンプには電圧帰還型と電流帰還型の2種類の回路方式があります。電圧帰還型アンプは+−入力端子間の電圧に応答し、電流帰還型アンプは電流に応答します。
どちらの方式でも信号を増幅したりバッファして出力することに違いはありません。アンプを使用することにより、2つまたはそれ以上の信号の加減算、電流⇔電圧変換および微積分を行うことができます。
ここで、理想的なオペアンプについて考えてみましょう。理想的なアンプは入力インピーダンスが無限大で、どのような信号源にも影響を与えません。
理想的なオペアンプの特徴
- 無限大の入力インピーダンス
- 出力インピーダンスは0
- 無限大の周波数帯域
- 無限大のオープンループゲイン
- DC誤差がない
- 入力バイアス電流が0
また、出力インピーダンスが0でどのような負荷をも駆動することができます。無限大のオープンループゲインと同相除去比を持ち一切のDC誤差がありません。しかし、現実のアンプには多くの誤差要因があり、オープンループゲインや同相除去比も限られた値となります。従って目的の用途に適したアンプを選択して使用する必要があります。アンプには多くの仕様がありますが、DC特性とAC特性で大きく2つのグループに分けることができます。
オペアンプの仕様
- DCまたは低周波特性に影響する仕様
オフセット電圧、入力バイアス電流、温度ドリフト、1/fノイズ
- AC特性に影響する仕様
BW (周波数帯域)、スルーレート、ゲイン誤差、セトリング時間、位相マージン、ノイズ、ゆがみ
- そのほかの仕様
CMRR(同相除去比)、PSRR(電源変動除去比)、同相入力電圧範囲
DC特性で特に重要な仕様は、入力オフセット電圧、入力バイアス電流、温度ドリフトそして1/fノイズです。またAC特性で重要な仕様は周波数帯域、スルーレート、ゲイン誤差、セトリング時間、ノイズそしてゆがみです。またDCおよびAC特性に双方に影響する仕様として、CMRR、PSRRおよび同相入力電圧範囲などがあります。DC特性のオフセット電圧はアンプの入力に微小な電圧が加わったものと考えることができます。
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