デジタルI/O端子を用い、リレーを介してデバイスや機器をスイッチング制御したいというケースがある。その際、I/Oラインおよび接続先のデバイス/機器の状態変化を知る手段が必要になることは少なくない。よくあるのは、I/Oラインの状態変化に対応して数秒間だけブザーを鳴らしたいという状況だ。これを実現するには、通常、状態変化をモニターしたい制御用のI/Oラインのほかに、ブザーを駆動するために余分のI/Oラインが必要になる。本稿では、1本のデジタルI/Oラインによって、リレーに加えてブザーも制御する方法を紹介する。
図1の回路では、I/Oライン(PA1端子)にデジタル信号を印加することにより、リレーK1をオン/オフして、接続された機器を制御する。I/OラインがハイになるとnpnトランジスタQ3がオンになり、リレーのコイルに電流が流れる。状態表示用のLEDであるD1は、リレーのコイルと並列に接続されており、I/Oラインがハイになるとオンになって、I/Oラインがローになるとオフになる。
このような動作に加え、図1の回路では、ブザーによって状態を知ることもできる。PA1端子をハイ/ローに切り替えることでリレーの接点の状態が変化すると、ブザーは短時間だけオンになる。この動作は、npnトランジスタのQ1とpnpトランジスタのQ2から成る相補型プッシュプルインバータを利用して実現している。
このインバータからの出力は、単極性のブザーの動作に合致するようダイオードブリッジ回路B1で整流され、ブザーを駆動する。このダイオードブリッジ回路には、ブザーに流れる電流の最大値を制限するための抵抗R4と、ブザーを“フェードオフ(徐々に停止)”させるためのコンデンサC1が直列に接続されている。PA1端子がローになるとトランジスタQ2がオンになり、コンデンサC1が正の電圧に充電される。この充電過程において十分な電流が供給される間は、ブザーの動作が継続する。PA1端子がハイになるとトランジスタQ1がオンになり、コンデンサはほぼ0Vまで放電する。この放電に伴って、ブザーは再度短時間だけ動作する。ブザーがオンになる時間は、抵抗R4とブザーの抵抗成分、コンデンサC1を直列結合した値に依存する。
図2に示したのは、この回路のSPICEシミュレーション結果である。I/Oラインの電圧レベルの変化に対応し、ブザーの電流が変化する様子が見て取れる。なお、このシミュレーションでは、50Ωの抵抗をブザーの代替として使用した。
ブザーがオンする時間を変更するには、抵抗R4とコンデンサC1で決まる時定数を変更すればよいが、その際には、電流制限の役割を担う抵抗の値を変えるのではなく、コンデンサの値を変えるべきである。また、インバータを構成するトランジスタを2個ではなく1個で済ませることもできるが、その場合にはかなりの電流が定常的に流れることになるので注意を要する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.