USB 3.0に潜む“わな”:簡素な仕様、複雑な実装(3/3 ページ)
使い勝手の良さから広く普及したUSB。その最新規格は、5ギガビット/秒の高速データ通信に対応したUSB 3.0へと進化した。このような魅力的な性能を備えるUSB 3.0の未来は非常に明るいものであるように思える。だが、実際にはこの高速性のメリットを享受するには、多くの課題を解決しなければならない。
USBに5Gbpsは必要か?
USBユーザーの多くが、通信速度のさらなる向上を求めているのはなぜだろうか。USBは、マウスやプリンタ、メモリーデバイスなどを使用する際に柔軟性と利便性を提供するもののはずである。しかし、USBメモリーを例にとると、最も大きなものでは容量が数Gバイトにまで拡大している。このことからわかるように、USB 2.0を用いて大容量コンテンツを転送すると、長い時間を要する。この例だけ見ても、利便性を確保するには、通信速度の向上が必要なことは明らかだ。
一方、市場関係者はホームメディアパソコンの例を指摘する。このタイプのパソコンは、HD映像の大容量ファイルやネットワーク接続の外部記憶装置を取り扱うことになるだろう。もし、それが5GbpsのUSB 3.0を備えていれば、ユーザーは外部ドライブをUSBポートに接続するだけで、SATA(Serial Advanced Technology Attachment)やネットワークの難しい設定について気にする必要はなくなる。
また、市場では今後数年でネットブックなどの携帯型パソコンからウェブや大容量メディアへのアクセスが急増すると予測されている。今日、このような携帯型パソコンと据え置き型パソコンの間を高速な通信で接続するほとんど唯一の選択肢は、ホームネットワークを構築することである。しかし、それには、煩わしいハードウエアの設定や管理の問題が伴う。単一のUSBケーブルでそれが実現できるとすれば、かなり簡単な方法として高い評価を得るだろう。またPLX Technology社などの企業は、USB 3.0をコンピュータ間の仮想ネットワークとして使用するためのプロトコルを考案中だ。
PLX Technology社のChou氏は、「USB 3.0を最初に採用するのは一般消費者向けのパソコンだ。2010年初頭には、ディスクリートなPHYチップがノート型パソコンに搭載される」と予測する。「現在、ノート型パソコンのベンダーの多くが、そのための設計を行っている」(同氏)という。一方、ビデオカメラやメディアプレーヤなど、大容量データファイルを扱う携帯機器のメーカーが、同じような時期にUSB 3.0を採用し始めるとの情報もある。
米Intel社がUSB 3.0を搭載したサウスブリッジチップをリリースするときが、USB 3.0の普及における大きなマイルストーンとなるだろう。その発表により、USB 3.0が一般的なものとなり、2011年半ばまでに普及の勢いが加速することが予想されている。
USB 3.0のもう1つの課題は、ソフトウエアかもしれない。Chou氏は、「ホスト側のUSB 3.0用ドライバは、機器側のドライバより複雑だ」と述べる。機器ベンダーには、常駐ホストドライバとともに実行するコードをホストに提供することが求められるかもしれない。業界関係者によると、米Microsoft社は、「Windows 7」のサービスパック1以前に、USB 3.0用のホストドライバをリリースする予定はないという。このため、USB 3.0の複雑なハードウエアが原因で、単なるドライバを用意することにかなりの時間を要することになるかもしれない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.