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BCM動作の蓄電キャパシタ用準共振充電器Design Ideas

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 蓄電キャパシタの高速充電には、多くの場合、フライバック方式の充電器が利用される*1)*2)。同方式の充電器において蓄積エネルギーが転送されるのは、充電器のパワーMOSFETがオフになったときである。このときも、スイッチング回路と蓄電キャパシタを含む負荷回路とは絶縁されている。そのため、トランスの2次側の電圧がゼロから変化し、それに対応してエネルギーレベルが変化しても、トランスの1次側の回路部品に過大な変化が加わることはない。

 旧来のフライバック方式充電器は、CCM(Continuous Conduction Mode:電流連続モード)で動作する。この場合、蓄電キャパシタはトランスの2次側から出力される短周期のパルス電流によって充電される*3)。この充電方式には、2次側の電流と蓄電キャパシタの電圧の両方を制限するために複雑な制御回路を要するという問題がある。すなわち、ほとんどの充電器は専用のPWM(パルス幅変調)制御ICを利用しており、そのために充電器全体としてのコスト上昇を招いている。

 CCM動作には、もう1つ欠点がある。それは、スイッチング回路に用いるパワーMOSFETがオフのときに、1次側から2次側に転送され、蓄電キャパシタの充電に使用されるエネルギーの割合が決して高くはないことである。

 これに対し、BCM(Boundary Conduction Mode:電流臨界モード)動作であれば、蓄電キャパシタに送るエネルギー量が増大する。この動作モードでは、2次側の電流がゼロになったときにパワーMOSFETがオンになるので、1次側の電流はゼロから立ち上がり、各オン期間ごとに蓄積されるエネルギーの割合が大きい。その他の動作条件がすべて同じならば、BCM動作ではMOSFETがオンの期間に、より大きな割合でエネルギーが蓄積され、より短時間で所定量に充電できる。BCM動作を利用する充電器には、米Maxim Integrated Products社の「MAX8622」や米Linear Technology社の「LT3468」といったPWMコントローラICが使用されている。

図1 BCM動作のフライバック方式充電器
図1 BCM動作のフライバック方式充電器 

 本稿で紹介するのは、こうした専用ICを使用しないでBCM動作のフライバック方式充電器を構成する方法である。BCM動作のフライバック方式コンバータの多くは、可変周波数型フライバック方式コンバータ、すなわちテレビ受像機用のスイッチング電源などで一般的に利用されている準共振ZVS(Zero Voltage Switching:ゼロ電圧スイッチング)コンバータとして実現されている。例えば、スイスSTMicroelectronics社の準共振コントローラIC「L6565」を使用すれば、BCM動作のフライバック方式充電器を構成できる(図1*4)

図2 各ノードの電圧/電流波形
図2 各ノードの電圧/電流波形 2次側の電流(水色)がゼロになると、MOSFETのドレイン‐ソース間電圧(紺色)が減少する。それと同時に、1次側の電流(緑色)がゼロから立ち上がる。
図3 キャパシタの充電電圧
図3 キャパシタの充電電圧 キャパシタの電圧は、約3秒間で完全充電のレベルに達する。

 この回路では、トランスT1の1次側の補助巻線を利用して磁束の変化を検出する。その変化(電圧)をL6565(IC1)のZCD端子(5番端子)に引き渡すことによりBCM動作が実現される。ここで、パワーMOSFET(Q1)におけるドレイン‐ソース間電圧の波形は補助巻線の電圧波形を拡大した形となる。トランスT1が完全に減磁されて2次側の電流が途絶えると、補助巻線の電圧波形が最初の谷間(最小値)に落ち込み、それに対応してIC1がQ1をターンオンする。この動作によって、電流がゼロの無効な期間がなくなり、BCM動作が実現される仕組みである。電流がゼロの期間がなくなるということは、蓄電キャパシタ(C1、C2、C4、C5)の充電時間が大幅に短縮されるということを意味する。

 蓄電キャパシタの容量は大きいので、充電プロセスの開始時には出力電圧が下がる。2次側の電流の減少は緩やかである。1次側に誘導される電圧は十分に低く、IC1のZCD端子をトリガーすることはない。IC1の起動時タイマー機能により、充電が開始した際のスイッチング周波数は2.5kHzに設定される。蓄電キャパシタに加わる出力電圧は、トランスの減磁が進行し、スイッチング周波数が可変になるまでは増大する。

 図2に示すように、2次側の電流(水色)がゼロになると、すぐにQ1がオンになり、ドレイン‐ソース間電圧(紺色)が減少する。同時に、1次側の電流(緑色)が再度増大し始める。出力電圧が完全充電の条件に近くなると、スイッチング周波数は約100kHzになる。図3に示すように、蓄電キャパシタの電圧は、3秒以内で完全充電レベルの750Vに達する。

 なお、図2と図3に示す波形は、IC1としてL6565を用い、Q1として「STP4N150」を用いて試作回路を構成した場合の試験結果である。380VDCの電圧は、トランジションモードPFC(力率改善)コントローラ「L6562」を使って構成した回路から供給した。この回路を充電器用の入力電圧として利用すれば、充電中の電力効率を向上することができる。


脚注

※1…Lan, Rayleigh, and Hunter Chen, "Flyback Charge Xenon Flash Capacitors," Power Electronics Technology, March 2007

※2…Creel, Kirby, "Expedite Transformer Calculations for Flybacks," Power Electronics Technology, January 2008

※3…Sokal, NO, and R Redl, "Control algorithms and circuit designs for optimally flyback-charging of an energy storage capacitor (e.g., for flash lamp or defibrillator)", IEEE Transactions on Power Electronics, Volume 12, Issue 5, September 1997

※4…"L6565 Quasi-Resonant SMPS Controller," STMicroelectronics, http://eu.st.com/stonline/products/literature/ds/7587/l6565.pdf


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