米Microsoft社は、『第1回 国際自動車通信技術展』(2009年10月20日〜22日)において、同社のウェブアプリケーションフレームワークである「Microsoft Silverlight」の技術を活用した車載情報端末向けのHMI(Human Machine Interface)開発環境を開発中であることを明らかにした。
一般に、車載情報端末をはじめディスプレイを持つ機器のHMIは、以下のようなプロセスで開発が進められる。まず、HMIのデザイナが、画像編集ソフトウエアを使って、アイコンの配置や画面のレイアウトのデザインを行う。次に、プログラマが、そのデザインを紙に印刷したものを見ながらHMIのコーディングを行う。ここで問題となるのが、デザイナとプログラマとの間で行われる情報のやりとりが紙ベースであることだ。
Microsoft社で車載機器向けプラットフォーム「Microsoft Auto」の製品マネジメント/マーケティング担当ディレクタを務めるGreg Baribault氏(写真1)は、「プログラマにとって、紙ベースの情報からデザイナの考えるとおりのHMIをコード化するのは大変難しい作業だ。そのため、デザイナは、プログラマがコード化したHMIが自分がデザインしたとおりのものにするよう変更を要求することになる。こうして、デザイナとプログラマとの間で何度もやりとりが行われる。当社は、この紙ベースの情報伝達による無駄を省くことが可能なHMI開発環境を開発している」と語る。
3つのツールで構成
Microsoft社の提案する開発環境は、以下の3つのツールから構成される。1つ目は、ユーザーインターフェース設計ツール「Expression Blend」である。同ツールは、一般的な画像編集ソフトウエアと同じような操作により、HMIのデザインを可能にする。メニューの表示で用いられるアニメーションのデザインなども行うことができる。
そして、Expression BlendでデザインしたHMIのデータは、XAML(Extensible Application Markup Language)形式のファイルとして保存する。XAMLは、Silverlightにも採用されているファイル形式であり、「Internet Explorer」でそのまま読み込んで表示することが可能である。
2つ目のツールが、統合開発環境「Visual Studio」である。これを使うことにより、Expression Blendで作成したHMIのXAMLファイルから、組み込み機器で使うプロセッサ向けのコードを自動生成することができる。「これら2つのツールを用いることで、プログラマはデザイナの考えるとおりのHMIを実現するコードを作成できるようになる。また、デザイナとプログラマとの間のやりとりが1回で済むので、開発期間の短縮やコスト削減にもつながる」(Baribault氏)という(写真2)。
なお、Microsoft社は、Expression BlendとVisual Studioを用いるユーザーインターフェースの設計プロセスについて、車載機器のみならず、ディスプレイを備えるほかの組み込み機器向けにも提案していく方針だ。
3つ目のツールとなるのが、フィンランドElektrobit社のHMI向け状態遷移管理ツール「GUIDE Studio」である。車載情報端末は、ナビゲーションやマルチメディアなどさまざまな機能を持つので、HMIの状態管理が複雑になる。そのため、状態遷移管理ツールを用いた管理が必要になるという。
Microsoft社は、Expression BlendとGUIDE Studioの双方にプラグインを組み込むことにより、互いのデータを連携させながらHMIの開発を進めることを可能とした。データ連携の一例としては、GUIDE Studioで扱う状態遷移図において、Expression Blendで作成したHMIの画面や画面要素をサムネイルとして表示することができるといった具合である。
Microsoft社は、カーナビゲーションシステム向けに展開するプラットフォーム「Windows Automotive」と、ナビゲーション機能を除いた車載情報端末向けに展開するMicrosoft Autoの2つを統合した「Motegi(仮称)」を開発中である。開発中のHMI開発環境は、2010年7〜9月期を目処に発表されるMotegiと併せて発表される予定だ。
(朴 尚洙)
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