ほとんどの回路では、グラウンドを基準レベルとして使用する。そのため、負荷のハイサイド(高電圧側)に対してではなく、ローサイド(低電圧側)に対してであれば、その状態を監視したり、制御したりするために、低電圧部品を比較的容易に使用することができる。例えば、ほとんどすべての低電圧レールツーレールオペアンプは、過電流の検出を目的とし、負荷とグラウンドとの間の抵抗の電圧をモニターする用途に使用できる。
これに対し、ハイサイドで同じことを行うには、通常、コモンモード電圧の許容値が高い差動アンプを選択する必要がある。つまり、アンプの選択肢に制限が存在することになる。また、過電流が発生したときの対処法が複雑なものとなる。
ハイサイドでの過電流保護をより簡単に行うには、保護回路全体の基準としてハイサイドの電源レールを使用すればよい。このとき、保護回路の消費電流はわずかなので、その電源には小型の3端子リニアレギュレータを使用することができる。このアプローチを具体化するには、あまり一般的でない、負電圧を生成するレギュレータを使用し、少しイレギュラーな回路構成をとることになる。すなわち、レギュレータのグラウンド端子にハイサイドの電源レールを接続し、入力端子をシステムグラウンドに接続することになる。そして入力端子以外はシステムグラウンドには接続しない。過電流保護回路におけるグラウンドは、すべてレギュレータの出力端子に接続する。
図1に示したのは、2相ステッピングモーターの駆動用電源に対する保護回路の例である。これにより、ハイサイドでの高速な回路遮断(ブレーカ)動作と自動リセット動作を実現することができる。この回路では、モーター用の24Vとブレーカ回路部用の12Vを電源として使用している。12Vの電源は、3端子レギュレータIC3により、24Vを基準レベルとして生成される。ブレーカ回路部の基準レベルはこの12Vなので、この回路から見ればモーター用電源の24Vが12Vに見える。なお、このリニアレギュレータの使い方でも、通常の使い方の場合と同様に、VO端子とGND端子の間には6.8μFのタンタルコンデンサC2を接続する必要がある。
R10とR12はいずれも0.33Ω/1Wの抵抗であり、モーター各相の過電流検出に使用する。ハイサイドの電流は、R10、R12とpチャンネルMOSFETのQ2、Q3を介してHブリッジ回路(図1には示していない)のハイサイド入力端子に流れ、各相のモーター巻線を駆動する。いずれかの電流検出抵抗の両端電圧が0.5Vを超えると、ブレーカ回路にトリガーがかかる。そして、Q2、Q3の両方がオフになる。その時点から20msが経過すると、自動リセット回路が働き、Q2、Q3がオンに復帰する。この間に、ハイサイドの一時的な短絡状態を無事に回避することができるはずだ。
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