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電気自動車でぶっちぎれ!(3/3 ページ)

ドラッグレースと言えば、GM社の「コルベット」やChrysler社の「ダッジ バイパー」に代表される、数百馬力のガソリンエンジンを搭載したスポーツカーが活躍するというイメージが一般的だ。しかし、最近では、重量が数百kgにも達する2次電池パックを搭載した電気自動車が、ガソリン車を差し置いて勝利を収めるようになっている。本稿では、米国で注目を集めている電動ドラッグレースカーや、それらを支える2次電池をはじめとした最新の部品について紹介する。

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リチウムイオン電池への期待

 しかしながら、スピードを追求する上で最後の頼りとなるのは2次電池の性能である。

 GM社が開発中のプラグインハイブリッド車「Chevrolet Volt(シボレー ボルト)」の開発過程において技術的に確立された車載リチウムイオン電池は、すでにDube氏のキラサイクルが採用している。将来的には、さらに多くのチームが採用する可能性が高い。

 Dube氏は、最先端の技術に常に目を光らせることで、米A123Systems(以下、A123)社の非常にパワフルなリチウムイオン電池を真っ先に入手できたという。同氏は現在、A123社製のリチウムイオン電池セルを総計550個使用した電動バイクを開発中である。そのセルを110個接続した5つのモジュールにより、標準の鉛電池をはるかに上回る出力密度を得ているという。ただし、具体的な数値については、Dube氏もA123社も明らかにしていない。

 これまでA123社は、高コストのリチウムイオン電池セルの破壊を恐れ、レーシングチームにそれを提供することには慎重だった。しかし、Dube氏は、各セルの電圧を規定の範囲内に収める2次電池制御システムを開発することにより、このハードルをクリアした。375Vの電圧を発生するDube氏の2次電池モジュールには、数百個のコントローラが使用されている。Dube氏は、「A123社には、電池セルは壊さないと約束した。われわれには、2次電池を守るノウハウがあるからだ」と強調する。

 Dube氏のチームが開発した技術は、大げさなものではない。シャントレギュレータとLEDを搭載した、切手2枚分ぐらいの大きさの回路基板で実現できている。シャントレギュレータは、センサーとして機能する。バッテリーが最大容量近くまで充電されると、システムがそれを感知して緑色のLEDを点灯する。容量が完全にいっぱいになると、赤い表示が点灯する。電流を停止したいときには、Dube氏自身の手でノブを回す。同氏は、このシステムを、冗談めかして“オプトバイオメカニカルテクノロジ”と呼んでいる。LEDがオプト(光学)、ノブがメカニカル(機械)、Dube氏自身がバイオ(生物)というわけだ。

 ほかのレースチームもまた、A123社のリチウムイオン電池を搭載したいと考えている。高い出力密度も大きな魅力だが、電池の重量を減らせることも期待できるからだ。これにより、Dube氏の電動バイクは、鉛電池を使っていたときと比べて車両重量を約45kgも削減することができた。より大きな車両であれば、さらなる重量削減効果が見込める。とはいえ、大部分のレースチームは、A123社からリチウムイオン電池を入手できる可能性はないと考えており、購入するだけの資金もない。

 それでも、希望の火が消えたわけではない。Wayland氏は、「適正な仕様のリチウムイオン電池を入手できれば、ホワイトゾンビでクォーターマイル10.85秒のスピードを出せる」と断言する。

 Wayland氏は、いかなる変化にも対応できるよう準備している。同氏は2008年、クォーターマイルで11.5秒の記録を破った際に、車体にドライバー保護用のロールケージを付けず、防火スーツも着用していなかったために退場処分を受けた。しかし、それを機に、ますますレースへの意欲を高めている。同氏は、「あれは勲章みたいなものだ。レーサーなら誰も皆、ああやってレース場から退場を言い渡されるのを誇りに感じるものだ」と語る。

 退場処分の勲章を獲得したWayland氏やそのほかのレーサーたちは、注目の新型リチウムイオン電池を自分のマシンに搭載できるかどうかにかかわらず、さらなるタイムの短縮を目指す。Wayland氏は、「10.999秒のタイムが出せたら上出来だ。私は、公道を走行可能で、なおかつ10秒台が出せる電気自動車のいちばん乗りを狙っている」と意気込んでいる。

(Design News誌、Charles J Murray)

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