ミツミ電機は、同社のプライベートショー『MITSUMI SHOW 2010』(2010年2月25日〜26日)において、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術で製造した圧電駆動型の2軸レーザー光走査ミラーを展示した。また、このMEMSミラーと緑色レーザーを使ったプロジェクタによるデモンストレーションを行った(写真1)。
このMEMSミラーは、シリコン上に銀合金を用いて1個のミラーを形成し、そのミラーをPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)薄膜の圧電効果を用いて動かせるようにしたデバイスである。このミラーに入射するレーザー光を、ミラーとの共振駆動によって反射することで、ラスタースキャンによる映像をスクリーン上に投影することが可能となっている。
ミラーの動作角度は、デバイス平面に対して水平方向が±12度、垂直方向が±9度。ミラーに入射するレーザー光との共振駆動の周波数は、水平方向が30kHz、垂直方向が60Hzである。素子サイズは、8.7mm×6.4mm×0.5mm。素子の中央にあるミラーの直径は1mm。
このデバイスをプロジェクタに用いる場合の利点は大きく分けて2つある。1つは、消費電力が定格で10mWと少なく、10V以下の単電源でも動作させられることである。もう1つは、レーザーの平衡光によって映像を投影できるので、スクリーンをどのような距離に設置しても焦点の合った映像を投影できることだ。ミツミ電機は、「既存のDLP(Digital Light Processing)プロジェクタや液晶プロジェクタでは、スクリーンに対して焦点を合わせる作業が必要となる。それに対し、このMEMSミラーを使えばフォーカスフリーのプロジェクタを実現できる。たとえ表面がでこぼこの壁であっても、問題なく映像を投影することが可能だ。主な用途としては、消費電力が少ないという特徴も合わせて考えると、携帯電話機やデジタルカメラなどへの搭載が始まっているモバイルプロジェクタが中心になる」と説明している。
なお、MEMSミラーのPZT薄膜は、自社で合成したゾルゲル溶液を塗布して形成した。一般的に、PZT薄膜の形成には、CVD(化学的気相成長)法やスパッタリング法が用いられる。しかし、「CVD法では、PZT薄膜の特性は良好だが十分な膜厚を得にくい。逆に、スパッタリング法では、十分な膜厚で薄膜を形成できるものの、良好な特性が得られない。今回採用したゾルゲル溶液を塗布する手法であれば、2μmという膜厚で、良好な特性を持つPZT薄膜を形成することができる」(同社)という。
血圧計用圧力センサーも
MITSUMI SHOW 2010では、デジタル出力タイプのMEMS圧力センサー「MMR901XA」も披露された。同社は、主に家庭用血圧計などの用途に向ける方針である。
MMR901XAのパッケージサイズは、7.0mm×7.0mm×6.1mm。パッケージ内には、圧力を検知するMEMSチップと、アナログの圧力信号をデジタル信号に変換する制御チップが並べて実装されている。
MEMSチップのサイズは1.3mm角。このチップにより、ピエゾ抵抗方式で圧力検知を行う。一方の制御チップは、分解能が16ビットの2次ΔΣ変調方式A-Dコンバータ、EEPROM、SPI(Serial Peripheral Interface)インターフェースなどを搭載している。
測定可能な圧力は40kPaまでで、分解能は3.3Pa。電源電圧は、2.4V〜3.6V(3.0V標準)。消費電流は、動作時が520μA、待機時が2μAとなっている。
(朴 尚洙)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.