高耐圧パワーデバイスの測定技術:最新ノウハウを徹底解説!(5/5 ページ)
電動自動車や太陽光発電システムなど、高電圧での電力変換を要する機器の市場が拡大している。そうした機器で設計上の重要な構成要素となるのが高耐圧のパワーデバイスである。そして、最先端のパワーデバイスでは、高耐圧/低オン抵抗という特徴を持つ基本性能を評価することが非常に重要な作業となってきている。そこで本稿では、パワーデバイスの測定を円滑に行うためのノウハウを詳細に解説する。
測定の具体例
最後に、SMUを用いてパワーデバイスを測定した事例をいくつか紹介する。
図23は、nチャンネルMOSFETのオフ領域における測定結果である。SMUを搭載したB1505Aを用いて、耐圧とリーク電流に注目した測定を行っている。ゲートに0Vを印加、ドレインには電圧源モードで10Vから正の方向に電圧スイープで印加し、1mAを電流コンプライアンスとして、停止するよう設定している。青色で示されたドレインの電圧と電流から、リーク電流が1nA〜10nA程度であり、1600V程度でブレークダウンすることがわかる。一方、橙色で示されているのが、同時にプロットされたゲートのリーク電流である。ドレインのリーク電流と比べて3ケタほど小さい1pA〜10pA程度となっている。なお、ゲートのリーク電流の測定値は、SMUに流れ込む電流なので本来は負の値をとるが、対数軸を用いるために絶対値で表示している。
IGBTのオン領域での例として、SMUを電流源モードとした測定結果を図24に示す。コレクタを電流源モードで0Aから40Aまでスイープし、電圧コンプライアンスを10Vとしている。ゲート電圧は8Vから0.4V刻みとした。
次に、ワイドバンドギャップ半導体の一種であるSiCベースのダイオードを測定してみた。リーク電流と耐圧、すなわちダイオードの逆方向特性を図25に示す。0Vからスイープし、500μAの電流コンプライアンスで、スイープを終了するようにしている。通常のシリコンベースのパワーデバイスの評価であれば、サブμA程度が評価の対象となることが多いが、SiCという新しい素材を評価するために、対数軸で表示することにより、測定した結果を一望できるようにしている。
同じSiCダイオードの順方向特性の測定結果を図26に示す。0Vから5Vまでの印加電圧で、30Aの電流コンプライアンスで測定を停止するようにしている。測定時のパルス幅は、青色のプロットは50μs、緑色のプロットは300μs、赤色のプロットは1msと変更している。つまり、パルス幅が大きくなるに従って、電流が流れにくくなっていることがわかる。これは熱による影響によって、ドリフト領域の抵抗値が上昇した結果だと推測される。
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