米Chrysler Group社は、イタリアFiat社の小型乗用車「Fiat 500」(写真1)をベースとする電気自動車(EV)「Fiat 500EV」を2012年に投入することを明らかにした。
Fiat 500EVは、ガソリンエンジンなどの内燃機関を搭載せず、モーターとリチウムイオン電池からの電力のみによって走行するEVである。車両サイズは従来のFiat 500と同じで、2ドアの4人乗り乗用車となる。Chrysler社のスポークスマンであるNick Cappa氏は、「Fiat 500EVは、電池による走行距離の制限を心配することなく、毎日の通勤に使える車になる」と述べている。
Chrysler社によると、Fiat 500EVのパワートレインは、大出力の電気パワートレインモジュール、最先端のリチウムイオン電池、ならびに電力フローを制御するEV制御ユニットから構成される。パワートレインと車両の開発業務は、すべて米ミシガン州オーバーンにあるChrysler社本部で行われる。販売価格は現時点では未定だ。
走行距離は80〜100マイル
米Design News誌の取材に対して、Cappa氏は「航続距離はおそらく80〜100マイル(129〜161km)程度になるだろう」と答えている。搭載されるリチウムイオン電池は、米A123Systems社から調達される可能性が高い。
また、Cappa氏によると、Chrysler社は充電インフラの整備に関して複数のパートナーと協議を進めているという。複数のパートナーとは、おそらく州政府や電力会社であると予想される。これについて、Cappa氏は「ガソリンを燃料とする従来の内燃機関を搭載した自動車であれば、給油には数分間しかかからなかった。しかし、現在のリチウムイオン電池ではそれと同等のことを実現するのは不可能だ。そのため、EVの普及に向けては、充電網を整備することが重要なポイントになる。当社は充電ステーションを製造していないが、自動車本体の開発を行っている当社が充電器メーカーによる高速充電技術の開発を支援することは、将来に向けてプラスの効果をもたらすはずだ」と述べている。
Chrysler社は、Fiat 500EVの充電時間についてはコメントしていない。ただし、ある競合のEVメーカーは、電力会社との協業により、充電時の入力電圧が440Vで、25分間で80%まで充電できる公共充電ステーションを開発したいとしている。このことから、Chrysler社が目標とする充電時間も容易に想像できるだろう。
Cappa氏は、「Fiat 500EVは、毎日運転する通勤用の完全電気駆動のEVとして必要な水準を満たし、大部分のドライバーの期待を満足させることができる」と述べている。
なお、北米市場では、量産タイプのEVの市場投入が本格化するのは2012年以降と見られている。2010年内には、日産自動車のEV「リーフ」や、米General Motors社のプラグインハイブリッド車「Chevloret Volt」などが登場する予定だが、米Ford Motor社や、ベンチャー企業の米Tesla Motors社(2010年5月にEV開発でトヨタ自動車と提携)などは、2012年以降の市場投入に向けた製品開発を進めている。Chrysler社も、これらの企業と同じ時期にEVの市場投入を目指す構えだ。
(Design News誌、Charles J Murray)
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