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基板パターンのスケーリング則Signal Integrity

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 図1(a)のような1本のマイクロストリップパターンがあったとする。このパターンをスケールアップし、幅w、厚さtおよび高さhのそれぞれが正確にk倍となる新しいパターンを作るとしよう。このように、断面寸法に対するスケーリング操作を行っても、伝送線路の単位長当たりのキャパシタンスCやインダクタンスLは変化しない。これらの特性値を表す計算式には、幅、厚さ、高さの比しか含まれていないからだ。つまり、寸法の絶対値はこれらの値に影響しないのである。仮に、幅が6マイル(9.7km)の巨大な銅パターンを、それに比例して大きな厚さを持つFR-4(耐熱性グレード4のガラスエポキシ)材料の基板上に形成したとしても、その単位長当たりのキャパシタンスは、相似的に小さいパターンの値と正確に同じになるということだ。

図1基板パターンのスケーリング則
図1 基板パターンのスケーリング則 2つのマイクロストリップラインの伝送線路パラメータは同一になる。

 このスケーリング則は、シグナルインテグリティのシミュレーションにおいて利用できる。シミュレーションツールの許容値よりも微細な寸法の基板配線パターンを扱う場合に適用すると便利に活用できるのだ。このような状況は、シリコン基板上にアルミパターンを配してマルチチップモジュールを構成する場合などに起こり得る。断面寸法のスケーリング則を利用して、各寸法はツールの許容値よりも大きくするが、電気的特性は元の設計と同じになるよう、シミュレーションツールを“だます”ことができるのである。

 上述したように、断面寸法のスケーリング則によれば、単位長当たりのキャパシタンスとインダクタンスは変化しない。では、有損失伝送ラインの特性計算に必要なほかのパラメータはどのようになるだろうか。

 まず、Gパラメータ、すなわちコンダクタンスは、導体を取り囲む材料の誘電特性によって決まる。パターンを構成する材料がスケールアップの前後で同じであれば、直流のリーク電流および誘電損失は同一になる。

 一方、Rパラメータ、すなわちパターンの抵抗値については調整が必要になる。例えば、図1(a)の導体パターンの抵抗率がρ〔Ωm〕であるとすると、図1(b)のスケールアップしたパターンでは導体の抵抗率をk2倍しなければならない。

 この抵抗のスケーリング方法については、細長い銅製の棒の抵抗値を求めるケースを想定すれば理解できるだろう。すなわち、その算出式は、銅の抵抗率に棒の長さを掛け、断面積で割るというものになる。棒の高さと幅をk倍すると、断面積がk2倍になるので、抵抗は1/k2倍小さくなる。従って、銅の抵抗率をk2倍することで、抵抗値は元の値と同じになる。

 この抵抗率のスケーリング則は表皮効果による抵抗を扱う場合にも成立する。このことを理解するために、表皮深さdが、電流の周波数f、導体の透磁率μを使って以下の式で表されることを思い出していただきたい。

 また、有損失伝送ラインにおいて問題となるのは、表皮深さの絶対値ではなく、パターンの厚さに対する割合であることも思い起こしてほしい。すなわち、ρをk2倍すると、表皮深さの式から表皮深さがk倍になるので、表皮深さとパターンの厚さ(k倍されている)の比は、元のパターンにおける比と同じになるということである。

 読者が使用しているシミュレータでは、抵抗率を必要な値に変更できるだろうか。もし、それが可能ならば、寸法をシミュレータの許容内になるようスケーリングすれば、単位長当たりの抵抗、インダクタンス、コンダクタンス、キャパシタンスが元の値と同じになる新規のパターンを作ることができる。この細工について、シミュレータが気付くことはない。

<筆者紹介>

Howard Johnson

Howard Johnson氏はSignal Consultingの学術博士。Oxford大学などで、デジタルエンジニアを対象にしたテクニカルワークショップを頻繁に開催している。ご意見は次のアドレスまで。www.sigcon.comまたはhowie03@sigcon.com。


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