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ARM社がプロセッサコア「Cortex-A15」を発表、処理性能は「Cortex-A9」の2倍以上

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 英ARM社は2010年9月、東京都内で記者会見を開き、高性能機器向けプロセッサコア「Cortex-Aシリーズ」の新プロダクト「Cortex-A15 MPCore(以下、A15)」を発表した。すでに、韓国Samsung Electronics社、スイスST-Ericsson社、米Texas Instruments(以下、TI)社へのライセンス提供を開始している。なお、A15は、これまで「Eagle」の開発コードで呼ばれていたものである。


写真1 アームの西嶋貴史氏
写真1 アームの西嶋貴史氏 

 会見の冒頭で、日本法人であるアームの社長を務める西嶋貴史氏(写真1)が登壇した。西嶋氏は、「ARM社は、5〜6年後にどのようなことが必要になるかを考えて、新しいプロセッサコアの開発を行っている。例えば、モバイル機器に搭載されている2次電池の容量でも長時間動作させることのできる、動作周波数がギガヘルツレベルのプロセッサコアとして、2005年10月に『Cortex-A8(以下、A8)』を発表した。その当時、5年後にそういった高い処理性能がモバイル機器に必要となるとは誰も考えていなかった。しかし、現在では、多数のモバイル機器がA8クラスの処理性能を持つプロセッサ製品を搭載するようになっている。A15も、A8と同じように、5〜6年後を見据えて開発したものだ。A15の投入により、スマートホンや高性能のモバイル機器だけでなく、車載機器やデジタル家電、サーバー機器などにも、ARM社のプロセッサコアを展開できるようになるだろう。A15を用いたプロセッサ製品を搭載した機器は、早ければ2013年にも登場する見込みだ」と語る。

 A15は、従来のARM社のプロセッサコアの特徴である低消費電力という特徴を維持しながら、より高い処理性能を達成することを目指して開発された。ICとして製品化される際には、32nm/28nm以降の製造プロセスを用いることを想定している。最大動作周波数は2.5GHz。マルチコア構成で利用する場合に、SMP(対称型マルチプロセッシング)構成で利用できるコア数は最大で4個まで。ARM社は、SMP構成で利用するコアの集合体を「クラスタ」と呼んでおり、同社からは、2クラスタ/8コアまでの構成を提案する予定である。ただし、「ファブリックを調整すれば、3クラスタ以上の構成も実現できるので、利用できるコア数に上限があるわけではない」(同社)ともしている。なお、A15はシングルコアで利用することも可能だ。

図1 「Cortex-A15 MPCore」の処理性能
図1 「Cortex-A15 MPCore」の処理性能 

 A15のマイクロアーキテクチャは、2007年10月に発表されたA8のマルチコア対応版「Cortex-A9 MPCore(以下、A9)」と同様に、スーパースケーラ方式を採用しており、アウトオブオーダー実行にも対応している。また、1回のクロックサイクルにつき、3つの命令のデコードと、8つの命令の実行が可能である。キャッシュメモリーは、L1キャッシュとして、命令用に32Kバイト、データ用に32Kバイトの容量を用意。最大4MバイトまでのL2キャッシュを内蔵することもできる。さらに、128ビットまでのデータバス幅を持つ、最新のオンチップバスインターフェース「AMBA 4」を採用している。加えて、ハードウエアレベルでの仮想化技術にも対応した。そして、仮想化や高度なアプリケーションのマルチタスク処理などに対応するために、最大1テラバイトまでの物理メモリー空間をサポートしている。なお、A9は、以下のようなマイクロアーキテクチャを採用していた。1回のクロックサイクルにつき、2つの命令のデコードと、4つの命令の実行が可能。L2キャッシュを内蔵することはできず、外付けのメモリーを使用しなければならない。オンチップバスインターフェースは、データバス幅が64ビットまでの「AMBA 3」を採用している。サポートする物理メモリー空間は、最大4ギガバイトまでである。

 ARM社は、A15の処理性能について、従来行ってきたDMIPS(Dhrystone MIPS)ベースの評価を行っていない。ただし、DMIPSに替えて、図1のような、製造プロセスの進展と絡めた相対的な性能評価を行っている。これによると、32nm/28nmプロセスで製造したデュアルコア構成のA15の処理性能は、65nm/45nmプロセスで製造した「ARM11」コアの15倍、現行の最先端のモバイル機器で利用されているA8の5倍、45nm/40nmプロセスで製造したデュアルコア構成のA9の2〜3倍となっている。

図2 「OMAP4」と「OMAP」プラットフォームにA15を搭載したプロセッサ製品の性能比較
図2 「OMAP4」と「OMAP」プラットフォームにA15を搭載したプロセッサ製品の性能比較 

 会見には、A15のライセンスを取得しているTI社を代表して、日本テキサス・インスツルメンツの営業・技術本部でワイヤレスビジネス担当部長を務める水上修平氏も出席した。水上氏は、「TI社は、携帯電話機用のアプリケーションプロセッサ『OMAP』をはじめ、さまざまな製品にARM社のプロセッサコアを採用してきた。OMAPでは、最新版の『OMAP4』にA9を採用しており、さらなる次世代品には、A15を採用する計画である」と述べる。

 また、TI社は、OMAP4と、OMAPプラットフォームにA15を搭載したプロセッサ製品について、同じ製造プロセスを適用した場合の性能比較を行っている。それによると、「ある処理をOMAP4で実行した場合、処理を完了するのに4.3秒かかった。これに対して、A15を搭載したOMAPは、先述した処理を同じ4.3秒で完了させる場合には、消費電力を60%削減することができた。一方、同じ処理を2.3秒で完了させることも可能であり、この場合には消費電力を15%削減できる(図2)」(水上氏)という。

(朴 尚洙)

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