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「複数の車載情報系LAN規格に対応可能」――Xilinx社がFPGAの車載展開を加速

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 米Xilinx社が、車載向けFPGA「XAシリーズ」の展開を拡大している。これまでは、「Spartan-3」ベースの「XA Spartan-3」を中核としていたが、2010年以降は「Spartan-6」ベースの「XA Spartan-6」の市場展開を本格化させる。さらに、個別の車載システムに特化した開発キットも投入し、拡大する車載向けFPGAの需要を取り込む方針である。

 現在、世界全体の車載向けFPGA/PLDの市場規模は約1億米ドル。そして、今後は年平均約22%の比率で成長し、2017年には6億米ドル程度まで市場が拡大するという調査もある。このような大きな成長の背景について、Xilinx社のオートモーティブ事業部でマーケティング/製品企画部部長を務めるケビン田中氏は、「微細化が進むことにより、ASIC/ASSPの開発コストは高騰している。かなりの規模で量産する製品でない限り、開発投資の回収は難しい状況にある。このため、量産製品へのFPGAの採用が広がっているのだが、車載市場でも同様のことが起こっている」と説明する(写真1)。

写真1 Xilinx社のケビン田中氏
写真1 Xilinx社のケビン田中氏

 Xilinx社は、FPGA/PLD市場全体では米Altera社とトップの座を争っている。しかし、車載向けに限れば54%のシェアを確保している。田中氏は、「当社のXAシリーズは、車載品質を保証できていることを示すために、米国の車載向けICの品質規格であるAEC-Q100に準拠している。さらに、日本の自動車メーカーなど、より高い品質を求める顧客には、AEC-Q100を上回る品質を確保した製品を提供できるようにしている。このような取り組みによって、一定の評価が得られているのではないか」と語る。

 同社が、FPGAの採用が拡大する車載システムとして想定しているのが、運転支援システム、運転情報表示システム、車載情報機器の3つである。まず、ナイトビューや白線検知、アダプティブクルーズコントロールなど、車載カメラやレーダーを用いる運転支援システムでは、FPGAが内蔵している高性能のDSPを活用することができる。次に、ヘッドアップディスプレイや液晶ディスプレイでメーターの表示を行うデジタルクラスタなどの運転情報表示システムでは、FPGAからグラフィックスの表示を直接行うことができるので、グラフィックス用プロセッサが不要になる。最後に、カーナビゲーションシステムをはじめとする車載情報機器については、「民生用機器と同等の機能を持った製品が市場から求められていることもあって、民生用機器の革新のスピードをとらえるためにFPGAが必要になっている」(田中氏)という。

 また、ドイツDaimler社の高級車「Mercedes Benz S-Class」のように、上記の車載システムを中心に、多数のFPGA/PLDが採用されている事例も存在する。Mercedes Benz S-Classでオプション装備をすべて選択した場合、1台当たり18個ものFPGA/PLDを搭載していることになるのだ。

 このような背景から、Xilinx社は、アプリケーション特化型の開発プラットフォームである「Target Design Platform」の1つとして、車載システムに特化した「Automotive Platforms」を展開する予定である。Automotive Platformsでは、先述した3つの車載システムに特化した開発キットを投入する計画だ。例えば、運転支援システム向けの開発キットであれば、車載カメラで撮影した画像から、システムに必要な情報を抽出するためのアルゴリズムに関連するIP(Intellectual Property)をパッケージにした「Vision Based IP Tool Kit」などを含めることになる。

 FPGAの採用拡大を後押しする要因はほかにもある。これまで、欧州の自動車メーカーは、カーオーディオなどに用いる情報系の車載LAN規格として、伝送速度が25メガビット/秒(Mbps)のMOST(Media Oriented Systems Transport) 25を採用していた。しかし、高品位(HD)映像を扱うようなカーエンターテインメントシステムでは、MOST 25では伝送速度が不足してしまう。「そこで、HD映像を伝送するために、1ギガビット/秒(Gbps)以上の伝送速度を持つ、イーサーネットベースのEAVB(Ethernet Audio Video Bridging)やSERDES(シリアライザ/デシリアライザ)ベースのインターフェースの利用が広がっている。また、MOST 25の後継規格として、HD映像に対応する伝送速度が150MbpsのMOST 150も策定されている」(田中氏)のだという。田中氏は、「つまり、情報系の車載LAN規格は、複数の選択肢が存在するのが現状なのだ」と指摘する。

 このことによって大きな影響を受けるのがティア1サプライヤである。ティア1サプライヤが、顧客である自動車メーカーごとに異なる車載LAN規格に対応するには、個別にその車載LAN規格に対応するICを用意しなければならない。田中氏は、「これは、確実に開発の期間とコストを増大させる要因になる。一方、FPGAは、車載LAN規格にかかわる機能をチップ内部の機能として組み込めるので、外付けのICを用意する必要がない」と述べる。Xilinx社は、2006年10月に、MOST 25に対応するNIC(Network Interface Controller)のIPを開発するなど、各種車載LAN規格に対応する機能をFPGAに内蔵するための取り組みを加速している。また、最新製品のXA Spartan-6は米Inova Semiconductor社の「APIX」を搭載することが可能となっている。これは、通信速度が最大1Gbpsに達するSERDESベースのインターフェースである。

(朴 尚洙)

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