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多機能化に向かう次世代カメラコンピュテーショナルフォトグラフィの活用で (3/5 ページ)

コンピュテーショナルフォトグラフィと呼ばれる技術分野に注目が集まっている。従来のカメラの撮像過程を変更し、シーンの単なるスナップショット画像以上の情報をイメージセンサーで取り込み、デジタル信号処理と組み合わせることで、従来のカメラでは不可能な「写真」を撮影しようという試みだ。本稿では、この分野の重要な一角を占め、撮影後の写真のピント変更を可能にするなど、多様な応用が期待できるライトフィールドの概念を用いた技術について説明する。

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ライトフィールドの取得方法

 上述したように、ライトフィールドを用いれば、従来のカメラでは実現できなかったさまざまなことが行えるようになる。では、ライトフィールドのデータは、どのようにすれば取得できるのだろう。


表1 ライトフィールドの取得方法
表1 ライトフィールドの取得方法 

 ライトフィールドデータの取得方法は、すでに何種類も開発されている。それらは大まかには表1のように分類でき、それぞれに利害得失がある。以下、各方式について説明する。

■多視点撮影


図11 移動カメラ
図11 移動カメラ レールに沿ってカメラを移動させながら撮影する。
図12 カメラアレイ
図12 カメラアレイ 
図13 カメラアレイの実現例(モックアップ)
図13 カメラアレイの実現例(モックアップ) この多眼カメラ(イメージセンサー)モジュールは、小型カメラアレイとして機能する。
図14 レンズアレイ
図14 レンズアレイ 1つのセンサーの上に、レンズをアレイ状に配置する。カメラモジュールを敷き詰める代わりに、1つのセンサーをブロックに分割し、各ブロックに対応させてレンズアレイを配置することでも小型カメラアレイと同等のことが実現可能である。

 ライトフィールドを多視点画像としてとらえる直接的な撮影方法である。例としては、カメラをレールなどに沿って移動させながら撮影する方法が考えられる(図11*2)。これであればカメラが1台で済むものの、カメラの移動を制御する機構が必要な上に、動的なシーンを撮影することができない。

 そこで、多視点撮影方式では、複数のカメラをアレイ状に配置する手法が用いられることが多い(図12*8)。この手法では、カメラの数を増やせば増やしただけ、ライトフィールドのデータ規模を高めることができる。その一方で、カメラを支えるフレームや各カメラの同期をとるための機構など、システムの規模が大きく高価になってしまうという問題がある。また、ライトフィールドの取得範囲を広げることはできても、データのサンプリング密度を上げるにはカメラの間隔を狭める必要があり、各カメラのサイズを小さくしなければならない。この問題を解決するために、筆者らは、非常に小型のカメラモジュールを複数敷き詰めた「多眼カメラモジュール」を試作中である(図13)。

 多視点撮影方式のもう1つの実現方法は、1つのセンサーの上にレンズのみをアレイ状に配置するというものである(図14*9)。この方法では、各レンズに対応して1つの視点の画像が記録される。レンズの数の分だけ、各視点の画像の解像度は落ちるが、密度の高い小規模なライトフィールドの取得には適している。


脚注

※2…M. Levoy, P. Hanrahan. Light field rendering. Proc. ACM SIGGRAPH 96, pp.31〜42, 1996

※8…B. Wilburn, N. Joshi, V. Vaish, E.-V. Talvala, E. Antunez, A. Barth, A. Adams, M. Horowitz, M. Levoy. High performance imaging using large camera arrays. ACM Trans. Graphics 24(3), pp.765〜776, 2005

※9…J. Tanida, T. Kumagai, K. Yamada, S. Miyatake, K. Ishida, T. Morimoto, N. Kondou, D. Miyazaki, and Y. Ichioka, Thin observation module by bound optics (tombo), concept and experimental verification. Applied Optics 40, pp.1806〜1819, 2001


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