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産総研がSiCデバイスをサンプル供給へ、2012年度からはSiC-MOSFETも

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 産業技術総合研究所(以下、産総研)は、『第19回シリコンカーバイド(SiC)及び関連ワイドギャップ半導体研究会』(2010年10月21日〜22日)において、インバータ機器などを開発する企業向けに、2011年度からSiCデバイスのサンプル供給を開始することを明らかにした。産総研の先進パワーエレクトロニクスセンター(茨城県つくば市)内に設けた試作ラインを用いて製造したSiCデバイスを提供する。まず、2011年度からSiC-SBD(ショットキーバリアダイオード)の提供を開始し、2012年度からはSiC-MOSFETの提供も始める予定だ。


写真1 パッケージング済みのSiC-SBD
写真1 パッケージング済みのSiC-SBD 

 同研究会では、産総研が開発しているSiC-SBDとSiC-MOSFETが展示された。SiC-SBDには、耐圧が600Vで定格電流が25Aのものと、耐圧が1200Vで定格電流が12.5Aのものがあり、それぞれ3mm角のチップを使用している。オン電圧は、耐圧600V品では25℃のときに1.50V、175℃のときに1.70Vで、耐圧1200V品では25℃のときに1.35V、175℃のときに1.63V。アバランシェ耐量は、耐圧600V品が2500mJ/cm2以上、耐圧1200V品が3500mJ/cm2以上となっている。SiC-SBDのチップだけでなく、パッケージング済みのものも提供可能だという(写真1)。


写真2 IE-MOSFETを作り込んだSiCウェーハ
写真2 IE-MOSFETを作り込んだSiCウェーハ 

 一方、SiC-MOSFET(写真2)は、産総研が独自に開発した従来のMOSFETよりもオン抵抗を低減できるゲート構造を持つIE(Implantation Epitaxial)-MOSFETをベースにしている。現在開発しているのは、耐圧が600Vで定格電流が25Aのものと、耐圧が1200Vで定格電流が25Aのもの。それぞれ2.5mm角のチップを使用している。オン抵抗は、耐圧600V品が2.9mΩcm2〜3.0mΩcm2、耐圧1200V品が4.2mΩcm2。なお、産総研は2006年にSiCを用いたIE-MOSFETの研究成果を発表していたが、その際は耐圧660Vのものでオン抵抗は1.8mΩcm2だった。産総研は、これらのオン抵抗の差について、「2006年の研究成果は、定格電流が10A、チップサイズが1mm角の試作デバイスを用いていた。これに対して、現在開発中のものは、定格電流が25A、チップサイズが2.5mm角となっている。また、量産を意識した製造プロセスを用いて開発していることもあって、2006年の研究成果よりもオン抵抗は少し高い。しかし、ほかのSiC-MOSFETと比べれば十分に低いオン抵抗を実現できているだろう」と説明している。

 ほかにも、SiC-SBDと通常のSi(シリコン)スイッチング素子で構成したハイブリッドインバータも披露された。また、ハイブリッドインバータのパワー密度の高さを示すために、Siデバイスを用いている太陽光発電システムの系統連携用インバータとのサイズ比較も示された(写真3)。

 なお、産総研は、今回のサンプルを含めて、SiCデバイスの量産試作やシステムへの応用実証に関する研究を、富士電機ホールディングスなどと共同で行っている。

写真3 インバータのサイズ比較
写真3 インバータのサイズ比較

 左下にあるのがハイブリッドインバータで、上側にあるのが太陽光発電システムの系統連携用インバータである。ハイブリッドインバータの定格出力は3kWで、パワー密度は約7kW/l(リットル)。一方、系統連携用インバータの定格出力は4kWあるが、サイズが大きいことからパワー密度は約0.1kW/lにとどまっている。

(朴 尚洙)

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