MHL(Mobile High-Definition Link)は、携帯電話機などのモバイル機器を、高品位のテレビ(HDTV)やディスプレイに直接接続できるようにすることを目的としたデジタルインターフェースである。もともとは米Silicon Image社が開発したものだ。これを利用することにより、例えば、携帯電話機で撮影した映像をHDTVで視聴するといったことが実現できる。
2010年4月には、フィンランドNokia社、韓国Samsung Electronics社、Silicon Image社、ソニー、東芝の5社がMHLコンソーシアムを発足させている。同コンソーシアムは、MHLの仕様について協議を進めるとともに、市場でMHLの普及を促進していく役割を担う。また、同年9月には、MHL 1.0の規格を正式にリリースしている。
MHLは、1080p/60fps(フレーム/秒)のフルHDの映像コンテンツを非圧縮で伝送できることを特徴とする。音声については、サンプリング周波数が192kHzまでのデジタルオーディオをサポートしており、7.1チャンネルのサラウンドサウンドに対応することが可能だ。また、携帯電話機をHDTVと接続した場合、テレビのリモコンで携帯電話機の映像/音声コンテンツを操作したり、あるいは携帯電話機でテレビを操作したりすることができるという。さらに、特徴的なのが、コンテンツを再生しながら携帯電話機を充電できるという点だ。例えば、HDTVに携帯電話機を接続した場合であれば、最小で5V/500mAの電力がHDTVより供給される。これにより、携帯電話機に内蔵されている電池を充電することが可能(電池切れを起こさずにHDコンテンツを再生することができる)だという。このほか、コンテンツの不正コピーを防ぐ著作権保護技術としてHDCP(High-bandwidth Digital Content Protection System)を採用している。
MHLでは、モバイル機器とHDTVの間を5本の配線でつなぐ。コネクタについては、micro USBなど既存のコネクタを利用することができるという。そのため、MHLを採用しても、新たなコネクタを導入するためのコストは発生しない。
Silicon Image社の子会社であり、MHLのプロモーションやライセンス供与を行う米MHL社でマーケティングディレクタを務めるBrad Bramy氏は、「MHLによって、家電と携帯電話機をシームレスに接続することが可能になる。すなわち、モバイル市場とコンシューマ市場の融合を図ることができる」と語る(写真1)。また同氏は、「コンソーシアムの構成メンバーである5社だけで携帯電話機の市場の69%をカバーしているし、そもそも、MHLは携帯電話機メーカーからの要望を受けて生まれたものだ。そのため、MHLは市場の要求を理解した規格になっている」と語り、同規格の普及について自信をのぞかせた。一方、今後の課題としては、「技術的なものというよりも、むしろどのようにして一般の人々にMHLの存在と利便性を知ってもらい、普及につないでいくかということが重要だ」と説明している。MHLのターゲット分野としては、HDTVのほか、ネットブックやタブレット端末、プロジェクタなどのオフィス機器、音楽プレーヤ、車載テレビまで広げていく。
Bramy氏は、「詳細は明らかにはできないが、MHLに対応した製品については、2011年の第1四半期(1〜3月期)に、何らかの発表が行われる予定だ」としている。
(村尾 麻悠子)
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